<高校サッカー:流通経大柏2-1山梨学院大付>◇準々決勝◇5日◇フクアリ
流通経大柏(千葉)が前年度優勝の山梨学院大付(山梨)を逆転で下し、優勝した07年度以来3年ぶりの4強入りを決めた。昨夏から空中戦、球際への恐怖心を取り除くために始めた「電柱トレーニング」の成果を出し、競り合いで相手を圧倒。0-1で迎えた前半29分、FW宮本拓弥(3年)の「顔面シュート」で同点。後半33分、途中出場のFW田宮諒(3年)の右足ボレーシュートで勝ち越した。8日の準決勝(国立競技場)は流通経大柏-久御山(京都)、立正大淞南(島根)-滝川二(兵庫)の対戦となった。
ゴール前へのクロスボールに対し、GK緒方は相手との接触を恐れず、何度も前に出た。189センチのDF増田主将は、186センチの相手FW加部に肉弾戦を挑み、空中戦で競り負けなかった。そして、同点ゴールは流通経大柏イレブンの、「恐れない姿勢」が生んだ。
前半29分、ゴール前の混戦から相手DFがクリア。このボールが前線に詰めていたFW宮本の顔面を直撃した。ところが、そのボールはゴールに向かってはずみ、相手GKの不意をついて、ネットを揺さぶった。
反射的によける場面もひるまなかった宮本は「当たってよかった。一瞬入ったのが分からなかった。右目に当たり、5分くらい見えなかった」。同点後、宮本を呼んでピッチの外で目薬をさした本田監督は「あのスーパーゴールで選手の気持ちが楽になった」とたたえた。その後も球際、空中戦でじわじわとプレッシャーをかけ、田宮の勝ち越しゴールを呼び込んだ。
球際に恐れないプレーには秘訣(ひけつ)があった。3年前、優勝したチームは華麗なパスワーク主体だった。本田監督は「これが流経のサッカーと思われたくなかった。模索した中で、大学でもプロでも通用する体作りが必要と思った」と持論を展開。6月以降取り入れたのが「電柱トレーニング」だった。
グラウンドの電柱にマットを巻き付け、本田監督が投げるボールを電柱にぶつかりながらヘディングで競り合う。これを月に数回、1人10本行うというもの。宮本は「球際の強さは、この練習をしてつくようになった」。名古屋入り内定のMF吉田も「電柱より強い人はいないですから」。異色のトレーニングで、新たなスタイルを構築した「流経サッカー」が、3年ぶりの栄冠にまた1歩近づいた。【塩谷正人】