<高校サッカー:滝川二3-0日章学園>◇準々決勝◇5日◇ニッパ球
日章学園(宮崎)が滝川二(兵庫)に敗れ県勢初の4強入りを逃した。「親子鷹」で目指した国立への夢も散った。早稲田一男監督(51)の三男で司令塔のMF進平(3年)は強豪の前に、ボランチの能力を発揮できず。体調不良者も続出しチームは万全ではなかった。
父と追った夢は実現しなかった。ボランチとしてチームを鼓舞し続けたMF進平は「絶対一緒に国立へ行く」という約束を果たせず、泣きじゃくった。今大会は日章学園初の8強入りを果たした。しかし準々決勝では昨夏インターハイ準Vチームに完敗して県勢初の4強入りを阻まれた。
ホイッスルが吹かれた瞬間、ピッチに崩れ落ちて額を芝にこすりつけて号泣。チームメートに抱き起こされるまで、しばらく立ち上がることができなかった。3年間の思い出があふれ出てきたという。「父と国立に行けず1番悔しかったけど、内容が濃い3年間でした。父には感謝の2文字しかない。みんなの前でたたかれたこともあるが、こういう人間に育ててもらえて感謝しています」。この日、持ち味のゲームメーク能力は影を潜めたが、精根尽き果てるまでプレー。父への恩返しを忘れなかった。
早稲田監督は長男一平(23)、次男昂平(20)も同校で指導している。しかし、ちゃめっ気たっぷりでだれにでも愛される進平には特に思い入れがあったという。プロを目指してほしかったが、卒業後の進路は本人の意志を尊重した。今春から家計を助けるためもあって就職する三男について質問されると感極まって目が潤んだ。「思い出があった子なんでね。最後はキャプテンマークをまいてチームをよく鼓舞した。『ごくろうさん』しかない。3年間頑張って強くなった」と労をねぎらった。進平が父親として指導できる最後の息子となった。
指揮官はイレブンの健闘もたたえた。3年生のほとんどが同中時代に全国大会2連覇を経験している。きずなやチームワークもよくここまで快進撃を続けていた。しかしこの日は満身創痍(そうい)で苦しんだ。FW福満主将は38度の熱のため途中交代、40度の熱をおして後半から出場したFW当瀬も本来の動きではなかった。しかも、DF深山は左足首骨折の可能性もあったが、痛み止めを打ち強行出場していた。それでも最後まであきらめなかった。「いい教訓で財産になった」(早稲田監督)。負けたが、勇姿は全国の高校サッカーファンに感動を与えたはずだ。【菊川光一】