<アジア杯:日本1-0オーストラリア>◇29日◇決勝◇カタール
李の決勝弾でザックジャパンがアジアの頂点に立った。日本(FIFAランク29位)はカリファ競技場で行われた決勝でオーストラリア(同26位)と対戦。0-0のまま突入した延長戦の末、勝利した。延長後半4分に途中出場のFW李忠成(25=広島)がDF長友佑都(24)の左からのクロスを左足ボレーでたたき込み、値千金の決勝ゴールを奪った。準々決勝、準決勝に続く控え組の大活躍で、日本が2大会ぶり、史上最多となる4度目のアジア制覇を成し遂げた。
ザックジャパンの3人目のラッキーボーイが、アジア制覇をたぐり寄せた。試合を決めたのは、延長前半9分から途中出場した李だった。同後半4分、長友の左からのクロスを受け、豪快な左足ボレーで値千金の決勝点を奪取。故障離脱した昨季まで広島で同僚だったDF槙野の得意とする弓を射るゴールパフォーマンスを披露すると、歓喜の疾走、そしてザッケローニ監督に抱きついた。
準々決勝カタール戦で出場停止のDF内田の代役DF伊野波が決勝点、準決勝韓国戦でも途中出場のMF細貝がゴールを奪った。そしてこの日、またもや生まれたラッキーボーイ。12月中旬に左ひざ半月板を手術したFW森本(カターニア)の「代役」で代表初招集の男が、「得点を奪うことでチームに貢献したい」との言葉通りの一撃をオーストラリアにお見舞いした。
日の丸を背負うことに人一倍の責任感と誇りを持つ。韓国国籍で日本に生まれ、04年にはU-19韓国代表候補として、韓国での強化合宿にも招集された。
その後も、元韓国代表の洪明甫氏から韓国の五輪代表入りを熱望されたが、悩み抜いた末に出した結論は「日本のために、日本人になる」。06年9月に日本国籍取得の申請を出し、07年2月に「日本人・李忠成」が誕生した。
国籍変更をしてまで、たどりついた日本代表。U-23代表として出場した北京五輪では振るわなかったからこそ、今回初招集された日本代表には決意を持って合流した。だから、カタール入り後も「日本を背負う誇りを胸に戦いたい。せっかくのチャンスだから、これをいかして代表に残りたい」と覚悟を固めていた。
MF本田圭を中心に攻めながら好機をいかせず、逆に大型なオーストラリアの体格をいかした攻めで大苦戦を強いられるチームメートをベンチから我慢して見つめていた。監督から出場を告げられると、ベンチ前で仲間とタッチ。今大会は初戦のヨルダン戦のみの出場だったが、「今は耐えなければいけない時。ここで切れたらおしまい」とひたすら我慢。昨季途中までは広島で控え暮らしながら、終盤にエースFW佐藤の故障離脱でチャンスをつかみ、12戦11発で代表もつかんだ我慢の男が、ザッケローニ監督の期待に応えた。
ザックジャパンのライバルは多い。前田、森本、岡崎…。だが、「裏への飛び出しには自信がある」と言い切る。「代表に生き残りたい」。日本人を選び、日本を人一倍誇りに思う男の一撃が、ザックジャパンを4度目のアジアの頂点に導いた。【菅家大輔】