<アジア杯:日本1-0オーストラリア>◇29日◇決勝◇カタール

 日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督(57)が、就任8戦目でビッグな勝利を挙げた。日本は、アジア杯決勝でオーストラリアと対戦し、延長死闘の末、競り勝った。毎試合、日替わりヒーローを出現させるなど、ザッケローニ監督の手腕が光った。就任5カ月目で、チームを戦う集団に変えた名将が、今後も日本を進化させる。

 右手1本では足りなかった。試合終了を告げるホイッスル。ザッケローニ監督は右こぶしを突き上げ、ピッチへ走った。直後、左手も挙げ、ジャンプしながら喜んだ。アジアの強敵を次々倒して勝ち取ったアジア杯。120分間、冷静に振る舞った同監督は、一瞬にして顔をほころばせた。

 ザッケローニ監督

 最高の勝利だ。最高のチームだ。日本国民の皆さん、こんなすばらしい代表を誇りに思ってください。

 魔法の言葉を掛けた。延長前半9分には初戦以来出番がなかった李を投入した。カタール戦で不調だったGK川島を韓国戦でよみがえらせたあのひと言。「オレはお前を信じてるぞ」。負傷離脱した香川の代わりに、藤本を初スタメンでピッチに送り出した時も掛けた言葉だ。

 就任5カ月で、戦う集団を築き上げた。同監督はドーハ入り後毎朝、欠かせないことがある。朝食会場で、各テーブルを歩き回り、控え組の選手1人1人に必ず声を掛ける。「困ったことはないか?

 ベンチスタートが続くけど、必ず出番が来るから。困ったことがあったら、いつでも相談においで」。カタールとの準々決勝で初先発した伊野波、韓国戦で途中出場した細貝と、控えだった選手が、得点を決めて日本を救っている。日替わりヒーロー出現の裏には、細心なところまで気を配る指揮官がいた。

 「試合中の私の振る舞いは選手が見ている。いかに選手を集中させるかが私の仕事」。前半は、フィジカルを前面に出す相手にてこずった。32分には失点危機もあったが、同監督はまったく表情を変えず、平然とした顔で試合を見守った。後半、チームがペースダウンすると、わざとジェスチャーを大きくして、イレブンを鼓舞した。

 就任8戦負けなし。大会前に「この大会はチームの成長が目標です」と話していたが、目標を大きく上回る結果を出した。次大会予選免除に加え、13年ブラジル開催のコンフェデレーションズ杯出場権まで手にした。「私は、私の選手を誇りに思う」。進化し続けるザックジャパンは、負ける気がしない。【盧載鎭】