体を張った勇気あるプレーが、DF岩清水梓(28=日テレ)の持ち味だ。弟銀士朗さん(26)は「最後の最後は必ず体を張って守るタイプ」と誇らしげに言う。前回W杯決勝の米国戦。延長後半終了間際、相手の決定機にペナルティーエリアすぐ外、スライディングタックルで止めた。判定は一発退場。自身初のカードと引き換えにチームの危機を回避し、世界一を手にした。

 父司さんは国体で活躍したアイスホッケー選手だった。その父の薦めで、中学進学を前にNTVメニーナの入団セレクションを受け、数百人の中から5人の合格者に入った。家族は「他選手の方が明らかにレベルが上なのに」と不思議がった。だが黙々とひたすら言われたことをやり続ける姿勢は、周囲とは異なっていた。「右向けと言ったら右を向くし、左足で蹴れと言ったら左足で蹴る。言われたことは正確にやる」と銀士朗さん。従順に技術を吸収し、地道に頭角を現した。

 W杯後の11年10月にプロ契約すると、同時にフロント業も手伝うことになった。「あなたがホームで90分試合をするために誰がどう動いているか。そういう人たちがいてサッカーをできていると感じるだけで違うと思う」。J3鳥取、J1湘南とクラブ業務に従事してきた弟銀士朗さんのアドバイスからだった。

 事務所では電話対応やパソコン作業に励み、スクールの現場にも立った。裏方の仕事を目の当たりにし、岩清水は「一生懸命なプレーで応えなくては」。周囲への感謝の思いが強くなった分、最終ラインでさらに体を張る。【岩田千代巳】