2人で一緒に行こうね-。MF安藤梢(32=フランクフルト)と親友の丸山桂里奈(32=大阪高槻)の胸には、この約束が深く刻まれている。11年W杯ドイツ大会。重圧に押しつぶされ、後ろ向きな発言が多かった安藤を丸山は見ていた。「『どこが悪いのかな』とよく聞いてきた」。ホテルが同部屋だったため、毎日一緒にランニングに出かけ、励まし合った。
準決勝のドイツ戦。丸山は決勝弾で安藤の誕生日を祝った。大会後、「ロンドンも一緒に行こうね」と約束した。約束通りそろって出場した12年ロンドン五輪も同部屋。自由時間は、男子の代表や自分たちの試合映像を見たり、デザートを食べながら“女子会”を開くのがお決まりだった。「あんち(安藤)が沈んだときは励まして。私が沈めば、あんちが励ます。2人でいれば自然と前向きになれた。大会後、カナダも一緒に行こう、と言いました」。
出会ったのは中学生のころ。丸山が所属していた読売メニーナを安藤が練習生として訪れた。しかし、安藤が地元栃木からは遠くて通えず、別々のクラブでプレー。再会は02年、丸山が日体大1年で代表に初招集された時だった。それから10年以上、支え合う存在になっていった。
5月1日の代表発表。丸山の名は呼ばれなかった。「もちろん、悔しかった。約束だったのに私は行けなくて。でも、あんちはきっと私の気持ちを分かってくれているはず」。親友の思いも背負って、32歳のMFはカナダのピッチに立つ。【小杉舞】