12年3月2日のアルガルベ杯デンマーク戦でFW菅沢優衣香(24)は、代表初ゴールを決めた。4月5日の国際親善試合ブラジル戦でもゴール。母久美子さん(46)に「なんか感覚が研ぎ澄まされてきたかも」と話すなど、自他ともにロンドン五輪代表をつかみかけていた。だが、好事魔多し。同13日、当時所属していた新潟の練習で左膝前十字靱帯(じんたい)損傷。全治6カ月の診断を受けた。
受傷から数日後、放心状態だった菅沢はポツリと、母に「(これからも)サッカーやってる自分を見たい?」とつぶやいた。実家のある千葉市内の病院で手術し、家族からは献身的な支えを受けた。退院時、母からは「なでしこジャパンで頑張って、頂点に立つ優衣香を見たいかな」の言葉があった。実家の近所からは退院祝いの寄せ書き色紙をもらった。その1行に「優衣香のお母さんにしてくれてありがとう 母」。涙があふれ、心は決まった。
13年に千葉移籍を決断した。母のそばでプレーを見せたかった。実家ではなく、近くに1人暮らし。だが試合前日は「今日のご飯はなに?」と甘えながら、大好物の母の手作りカレーを頬張るのが最高の活力だ。母も「花嫁修業はしてくれないけれど、一緒にいられるのはうれしい」と喜ぶ。
昨季はなでしこリーグで20得点で初の得点女王に輝いた。今季も7得点で単独トップ。今年1月の母の誕生日にはアディダスのシューズをプレゼントした。カナダで応援してくれる母の前で、次はゴールもプレゼントして恩返しする。【鎌田直秀】