女子サッカーの先頭を20年間走り続けてきたMF澤穂希(36)。その最後のW杯に注目する人は多い。女子レスリング五輪3連覇の吉田沙保里(32)もその1人。「澤さんの頑張りを見ていると、私も頑張らなきゃって思う」。初戦を楽しみに、吉田は言った。
知り合ったのは、04年アテネ五輪後のテレビ番組でだった。もちろん、互いに存在は知っていたが、話をして気が合った。「何でもはっきり言ってくれるのがいい」。一緒に食事をし、語り合う。「普通の女の子の話です」。恋愛相談でダメ出しされるのは、いつも吉田。「違うことは違うと言うのが優しさでしょ、って言われて。ズバリ本当のことを言ってくれる。お姉さんみたい」と笑った。
ともに競技の開拓者だ。澤は96年、吉田は04年、初めて実施された五輪から出場し、女子サッカー、女子レスリングの知名度向上に貢献してきた。苦しい時代も知っている。「特にそういう話はしないですけど、自分の思いに周りがついてきてくれるというのは同じかもしれない」と吉田。互いの存在が、刺激になっているのは間違いない。
最後に会ったのは、5月6日。なでしこリーグの東京での試合を応援し、その後に食事をした。W杯代表入りを祝福すると、澤は「次は試合に出られるように頑張る」と話したという。女子では世界初の五輪4連覇を目指す吉田も、6月19日から世界選手権選考会の全日本選抜を控える。「競技は別だし、個人と団体の違いもある。でも、なでしこの活躍は私の励み」。遠くカナダの親友を思いながら吉田は言った。【荻島弘一】(おわり)