なでしこジャパンのMF宮間あや(30=岡山湯郷)が、女子サッカーをブームではなく、日本のスポーツ文化のひとつにするため、こん身のメッセージを発信した。女子W杯カナダ大会準優勝から一夜明けた7日、なでしこジャパンは成田空港着の便で帰国。完敗した米国との決勝のショックが癒えず帰国後も涙を見せるメンバーがいる中、宮間は毅然(きぜん)とした態度。女子サッカーの行く末を念頭に、スポーツファンの理解を求めた。メンバーは12日に再開するなでしこリーグから、休む間もなく動きだす。
カナダから帰国後の会見で、七夕の夜に、宮間が願ったのは女子サッカー人気の定着だった。「女子サッカーの試合がある日に、会場にユニホームを着た女の子が数多く向かっていったりすること。それが文化だと思う」。米国との決勝戦後にも「なでしこブームではなく文化にしたい」と強調し、この国内での注目度を一過性にしたくない思いを口にしていた。
週末の12日には、休む間もなく、なでしこリーグが再開する。宮間は「私たち(岡山湯郷)はINAC神戸戦ですし、もちろんみんなも試合に出るはず。見に来てほしいです」と、繰り返して観戦をアピールした。
女子サッカー普及のために、ただひたすらに勝利を追求し戦ってきた。11年女子W杯ドイツ大会初優勝、12年ロンドン五輪銀メダル。一時は、なでしこリーグもJリーグ並みの集客を誇ったこともあったが、今は減少傾向にある。「私たちは結果を出し続けない限り、人気が離れてしまう不安を抱えている」。だからこそ、人気を維持するには、連覇が必須と決意を持って臨んだ大会だった。準優勝の結果について「一番欲しかったワールドカップを手にすることができなかったので、その代わりになるものはない」と、悔しさを強調した。
宮間にとって、今大会はMF澤と同様に「最後のW杯」と決意して臨んだW杯だった。前日は宿舎で選手、スタッフ、家族らが参加し慰労会が開かれた。ごく近しい選手には代表を退く意向は伝えた。
今後の女子サッカー界の普及、発展について報道陣に問われると「1人の女子サッカー選手として、日々を大切に頑張っていこうと思います」と答えた。日の丸をつけて戦うことだけでなく、今後はさらに広い視野から、発展に寄与する覚悟を固めつつある。
8月に東アジア杯(1日開幕、中国・武漢)が開催され、なでしこジャパンは北朝鮮、韓国、中国と対戦する。来年2~3月に開催予定のリオデジャネイロ五輪アジア最終予選も間近に控える。代表強化のために要望も出した。「もう少し代表合宿の時間を増やして欲しい。試合も増やしてほしい。そうすれば、また違う経験ができてくる」。優勝した米国は今大会に合わせ、海外でプレーすることを自粛させ、代表チームは常に合宿し、結束、連係を高めて結果を出した。
来年のリオ五輪での金メダル。それがなでしこジャパンの次の大きな目標になる。「女子サッカーを文化に」を合言葉に、また新たな1歩を踏み出す。【鎌田直秀】