<14年6月、大阪合宿>
U-21(21歳以下)日本代表の第2回国内合宿が堺市内で行われた。手倉森監督は初日の訓示で「ザックジャパン超え」をノルマに設定。開幕が迫っていた14年のW杯ブラジル大会を念頭に「この後、A代表がW杯で何らかの成績を残す。それを我々が塗り替えなければいけない」と訴えた。
当時のW杯代表23人のうち16人に五輪出場経験があったため、U-21代表にもリオデジャネイロ五輪経由でロシア以降のW杯を目指す覚悟を持たせるためだった。「A代表を客観的に見るのではなく、上回るイメージを今から思い描いてほしい」と意識を刺激した。
夜には異例の選手ディスカッションを行わせた。ミーティングで試合映像を示し、プレーごとの状況判断について選手に話し合わせた。議論の題材は3月の東京合宿のU-19代表戦。4-2で勝った試合の得点シーン、失点シーンを計14シーン抽出。一般的には監督が解説、指導するところだが「プレーする選手が気付かないといけない」と意図を説明し、あえてDFやボランチに攻撃の場面を、FWや2列目の選手に守備の場面について意見させた。
MF大島は「前でボールを奪われた時、早く自分の位置に戻る方がいいのか、その場で守備した方がいいのか、など話し合いました」。50分間、19〜21歳の25人がホームルームのように意見を出し合った。短い期間で理解を深めるため、合宿前には代表候補の約50人に映像と説明プリントを送付。予習もさせていた。指揮官は「目指す全員攻撃、全員守備のため違うポジションの話もさせた。整理できたね」と満足顔だった。
▼練習試合(対全日本大学選抜)1●2【得点者】岩波拓也
戦術の浸透に重点を置いた合宿だったが、一朝一夕では結果が出なかった。練習試合は、手倉森ジャパン国内初黒星を大学生相手に喫してしまう。前半28分、A代表ザッケローニ監督も注目していた当時19歳のDF岩波がCKから頭で先制弾。ところが、岩波ら先発メンバーが退いた後に2失点。層の薄さを露呈する逆転負けだった。それでも手倉森監督は収穫を強調。「大学生も同じ五輪を狙う同世代。負けたU-21代表が痛い思いを糧にレベルアップしてくれれば。そのために『負けてもいいや』と思っていたくらい。逆に大学選抜は勝ったことで自信をつけた。世代全体が良い方向に進む」と振り返った。