<15年3月、リオデジャネイロ五輪アジア1次予選を兼ねるU-23アジア選手権予選(マレーシア)>

 五輪への第1関門に差し掛かった。日本協会は、確実に最終予選へ駒を進めるため海外組2人に招集レターを送付。ヤングボーイズFW久保裕也とザルツブルクMF南野拓実の1次予選参加が実現した。ただし3試合中2試合しか起用できない条件をのむ形。五輪予選に拘束力がないため、霜田技術委員長が2月中旬に両クラブを訪れた際、招集の交換条件を提示された。

 南野は途中合流、途中離脱。久保は最終日まで拘束はできたが、3試合のいずれか2試合しか出場の許可が下りなかった。それでも招集に踏み切った手倉森監督は「2人を組み合わせることで世界への意識を植えつけたい」と、国内組への刺激と好影響に期待した。

 ▼第1戦(対マカオ)7○0【得点者】遠藤航、豊川雄太、野津田岳人2、O・G、鈴木武蔵、南野拓実

 開幕直前の練習試合ではマレーシア3部レアル・ムリアに5-0、同1部サイムダービーに4-1と圧勝した。迎えた初戦のマカオ戦。リオへと続く長い旅の始まりを告げたのはMF遠藤主将の先制弾だった。前半22分、MF豊川のCKをダイビングヘッドで押し込む。この得点で初戦の力みがチームから取れ、最高気温37度の猛暑下で7発。南野も得点をマークした。同日、日本ではA代表がハリルホジッチ監督の初陣チュニジア戦が行われていた。遠藤は比較を念頭に「日本はアンダー世代も、しっかり戦えるところを見せたかった」と大勝してみせた。

 ▼第2戦(対ベトナム)2○0【得点者】中島翔哉2

 高温多湿の環境に苦しんだ。試合前はスコール、試合中は稲妻、気温27度、湿度80%。蒸し暑く、ぬかるむピッチは足首まで埋まるほどだった。マカオ戦から先発7人を入れ替えた日本は、5バックの前にMF4枚を並べたベトナム守備を崩す糸口がつかめない。日本を知る三浦俊也監督の術中に完全にはまっていた。

 それを1人で破ったのが10番だった。前半43分、MF中島がドリブルからFW南野へパス。折り返しを受けると、GKの動きを見極めて流し込んだ。1-0のまま迎えた後半ロスタイム1分にも2点目。FW浅野のパスを中央で受け、右足でゴール右隅を射抜いた。

 試合前は、海外組の久保と南野の同時先発ばかり注目された。「2人ともうまいので僕は合わせてもらいました」と謙遜したが「競争が激しくなったので負けられないし、楽しみ」と発奮。手倉森ジャパン最多の通算13点目をマークした。

 ▼第3戦(対マレーシア)1○0【得点者】久保裕也

 引き分け以上で1次予選1位通過が決まる。最終マレーシア戦で結果を出したのは、リオ世代の「海外組第1号」FW久保だった。前半41分、DF安在の左クロスに反応し、頭でコースを変えてゴール左に押し込んだ。手倉森ジャパン4試合目での初ゴールだった。

 12年に高校生でA代表入りした逸材だが、2日前のベトナム戦はシュート0本に終わった。翌日、手倉森監督から「(本田)圭佑やオカ(岡崎)は合流翌日でも結果を出している」とA代表の海外組との違いを指摘され「短い時間でも合わせるのが代表」と納得。痛めていた右足首をテーピングで固めて強行出場し、意地の決勝ゴールを決めた。

 久保が次に合流できるのは翌年1月の最終予選。「やることがいっぱい。1人で(得点を)取り切る力をつけて帰ってきます」。五輪出場権3枠を争う決戦に向けて、スイスでさらに成長することを心に誓った。