<15年10月、佐賀合宿(練習試合=対福岡大、鳥栖)>
A代表のコーチ兼任だった手倉森監督が、この合宿からU-22日本代表専任となり、直前のW杯アジア2次予選の中東遠征スタッフから外れた。リオデジャネイロ五輪アジア最終予選を兼ねたU-23アジア選手権まで3カ月。ハリルホジッチ監督の配慮で「本業」に専念することになった。
▼練習試合(対福岡大=40分×2)0△0
手倉森ジャパンのスパーリングパートナーを務めたのは、192センチのFW、188センチのMFをはじめ、フィールド選手の平均身長181・4センチの巨漢大学生軍団だった。同174・2センチの手倉森ジャパンを、実に7センチ以上も上回っていた。開始直後は高さで押され、186センチDF岩波も必死の空中戦を強いられた。
攻撃時もリーチの長い福岡大守備陣に、パスをからめ捕られたり、ドリブル突破を封じられる場面もあった。それでも徐々に対応し、MF関根らのスルーパスから相手DFの背後を取って、主導権を握った。
岩波は「大きな相手とやって、北朝鮮や中東勢対策の意識付けができた」とうなずいた。結果はスコアレスドロー。しかし手倉森監督は「得たものは大きい」と満足げだった。
▼練習試合(対鳥栖)7○0【得点者】奈良竜樹2、浅野拓磨2、中島翔哉、野津田岳人、鎌田大地
DF奈良のヘディング弾2連発を契機に攻撃が爆発した。鳥栖が主力をほとんど出場させなかったこともある。それでも後半ロスタイム、鳥栖所属のFW鎌田がチーム7点目を挙げると、鳥栖サポーターからも大歓声が起きた。
そしてゴールラッシュ以上に、チームにとって留飲を下げる出来事もあった。視察した日本代表のハリルホジッチ監督は「可能性を感じる。最終予選を突破して、五輪本大会に出場するクオリティーを持つチーム」と評価した。
A代表の指揮官からは、9月のJ3町田戦後に「このチームには何もないな」と酷評されていた。手倉森監督は「選手たちにはそのことを話した。そして、今回は可能性を示してやれとハッパをかけた」と明かした。言葉に応じるように、選手たちは勢いのあるプレーを続け、メモを取るハリルホジッチ監督のペンを90分間止めさせなかった。
手倉森監督は「普段より合宿期間が1日長かったこともあるが、選手が変わるに十分な時間を持てた」とうなずいた。ビデオミーティングを重ね、相手DFの死角側からライン裏を突く攻撃コンセプトを明確にした。前日28日には佐賀市内の病院の慰問後に「日本代表として、みなさんを勇気づけ、希望を持っていただくプレーをしないと」と鼓舞した。