為末大学
為末大学 オリンピックを考える◆為末大(ためすえ・だい)1978年(昭和53年)5月3日、広島市生まれ。広島皆実高-法大。400m障害で世界選手権で2度(01年、05 年)銅メダル。五輪は00年シドニー、04年アテネ、08年北京と3大会連続出場。自己ベストの47秒89は、現在も日本最高記録。12年6月の日本選手権 で現役引退。現在は社会イベントを主宰する傍ら、講演活動、執筆業、テレビのコメンテーターなどマルチな才能を発揮。爲末大学の公式サイトは、http://tamesue.jp/
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冬季五輪で日本が出来ること

 冬の五輪は世界的に放送権が売りにくい。放送権のバランスは夏冬で7対3だともいわれているが、実際にはもっと差があったのだと思う。最近は夏冬セットで放送権を売っている。

 最大の問題は参加する人種の少なさだ。競技特性的に仕方のない側面はあるのだけれど、スキー、スケートをしている黒人選手をほとんど見ない。米国に滞在していた時に10年のバンクーバー五輪があったが、夏の五輪以上に放送は少なかった。参加も12年ロンドン五輪では204だった参加国・地域に対し、ソチ五輪では87カ国・地域だけの参加になっている。

 よく話に出るのが、バスケットボールなど室内競技を冬に移行するという案だ。夏は競技数が増えて肥大化している中、夏の人気があるコンテンツを冬の競技に持ち込んで充実させようというアイデアなのだろうと思う。

 夏と冬の競技で大きな違いがあるとしたら、冬は世界的に競技を認知させることがとても重要視されるということだろう。もちろん夏の五輪もムーブメントを拡大させることは大切なのだけれど、冬の五輪はそれに輪をかけて種目を世界に広めていくことが大切になる。参加者、参加国も少なければ、当然ファンも少なくなってしまう。サッカーがあれほど人気なのはサッカーを行っている国が多いからだ。

 私は、その中で日本に出来ることは多くあるのだと思っている。まず、世界的に注目されているフィギュアスケートのスター選手は日本には大勢いるし、そもそもフィギュア自体が日本でマーケティングが成功し、大きなファンを抱えている。その日本側が提供できる情報、またはファンの発信力には、それなりの力があるのではないか。

 夏は相当大きいので日本の影響力は小さいけれど、この冬の五輪でこそ日本には選手のみならず、さまざまな形で影響力を発揮し、ムーブメントを作っていってほしい。もし本気で仕掛けていけば、冬の五輪と言えば日本、と世界に思わせることも十分可能だ。

 2020年の東京開催が決まり、夏の五輪ばかりが注目されるけれど、この冬の五輪の中での日本のポジションを高めることが結構重要なのではないかと思っている。(為末大)




日本のメダル数

金メダル
1
銀メダル
4
銅メダル
3

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