[ 2014年2月19日9時3分
紙面から ]複合個人ラージヒル
6位でゴールした渡部暁(右)(撮影・井上学)<ソチ五輪:ノルディック複合>◇18日◇個人ラージヒル
ノルディック複合の個人ラージヒル(LH)で、メダルが期待された渡部暁斗(25=北野建設)は6位に終わった。12日のノーマルヒル(NH)で、94年リレハンメル大会銀の河野孝典以来、20年ぶり2人目の個人戦メダルを獲得したが、前半ジャンプ(HS140メートル、K点125メートル)で4位につけたものの、トップと33秒差で迎えた後半距離(10キロ)で、順位を落とした。20日の団体戦で今大会2個目のメダルを狙う。
土砂降りの雨が、行く手を阻んだ。渡部暁は、トップから33秒差でスタートした後半距離。序盤から早いペースで進む10人の集団の後方を進んだ。3キロ過ぎに1度は2番手まで上がったように果敢にアタックしたが、距離が得意な選手がそろい前に出られず自分のペースが作れなかった。4周目(1周2・5キロ)の下りでは単独で転倒。再び前に取り付くときに無駄に足を使わされた。ラストで先頭5人が抜け出すと、もう追いかける余力はない。2つ目のメダルが、どんどん遠のいていった。
「勝負しようと思って前に出ようと思ったら足をすくわれた。最後は諦めた選手を抜いただけ。転倒しなければなんて、たらればの話しをしてもしょうがない。今日は順位をつけなくていいんじゃないんですか」。12日のNHで同競技に20年ぶりのメダルをもたらしたエースが、疲れ切った表情で、悔しさをあらわにした。
強気で攻めてきた。12日に五輪メダリストになったが、相変わらず「強いのはW杯王者」と言う。メダリストになり、周囲は騒がしくなっても「何も変わらないですよ」と冷静に振る舞った。複合の勝者をたたえる「キング・オブ・スキー」の言葉に対しても「本当に言われているんですか?」と疑問視する。飛躍と距離の両方をこなすが、どちらもスペシャリストにはかなわない。決して天才ではない。努力を重ね続ける天才だ。だからこそ「自分で納得したことはない」と、どこまでも強さを追い求めた。
20日の団体戦で今大会2個目のメダルを目指すが、最年長の加藤大平(サッポロノルディックク)が前半ジャンプで転倒し、左肘を脱臼をするなど大けがを負った。ケガの状態を知らず、取材エリアで団体戦の欠場を伝え聞くと約5秒間、絶句した。「チームのキャプテンなんで、なんて言ったらいいか分からない。頑張ります」。前向きな言葉とは裏腹に複雑な表情を浮かべた。「複合ニッポン」の新たな扉を開けられるか、最後に大事な一戦を迎える。【松末守司】