オーナーの森澤天一朗さん

　心地よい喫茶店を求めさまよう“脱力系連載”も、ついに１０回目を迎えました。これもひとえに読者の皆様のおかげです。記念すべき区切りの今回、フラッと訪ねたのは大阪・福島区の「喫茶　篝（かがり）」。古い街並みを残した野田新橋商店街のアーケードの一角に、何やら異彩を放つお店が見えてくる。おそるおそる店内に足を踏み入れると驚いた。

　これは何ごとですか？
　 　予想以上に広いスペースに、所狭しと居並ぶ仏像の数々。そして壁際にはいかにも高価そうな調度品が飾られており、その手の趣味をお持ちの方なら卒倒しそうな光景だ。単なる趣味で仏像を陳列しているわけではない。オーナーの森澤天一朗さんは言う
　「値段なんか関係ないねん。要は心の問題やからな。仏教用語に『喫茶去（きっさこ）』っていう言葉があるんやけど、それは『お茶でも召し上がれ』という意味やねん？」
　う～ん、深いですね。森澤さんがこの喫茶店をオープンさせたのは、ちょうど４０年前の１９７０年。それから順調に店舗を増やし、現在でも大阪府内に３店舗を展開している。

　篝（かがり）の店内

　「昔はケンカばっかりしてたけどな。ある時ひょんなことから偉いお坊さんと出会い、考え方が変わってから仏像を集めるようになったんや。いや、その人はホンマに普通の人が会えないような高僧やで」。
と森澤さんは言う。そんな“ありがたい”環境の中でいただくミックスジュースはまた格別。これで４５０円とは驚きだ。さらにホットドッグやホットケーキなどの軽食類も、コーヒー（ｏｒ紅茶）とセットで５５０円と非常にリーズナブル。
　「ウチのミックスジュース、うまいやろ？　どこにも負けてないと思うで。中身？　そんなん企業秘密に決まってるやん！　」
　と、森澤さんは自信満々。さまざまな仏像やレトロな調度品に囲まれて味わう絶品のミックスジュース…繁華街で見つけた異空間でした。
　【中上　博】