<第89回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)

 「赤城おろし」の申し子が箱根の山登りで躍動した。13位でタスキを受け取った法大の関口頌悟(2年)が、昨年まで君臨した柏原竜二に並ぶ5区歴代3位の8人抜きの快走。3年ぶり出場となったチームで、シード権獲得に大きく前進する5位でゴールに飛び込んだ。ペタペタペタ…。まるで競歩のように太ももを上げない独特の走法に、関口は「あまり足を上げると疲労がたまると思って。でも、もともと『ペタペタ走法』です」とはにかんだ。

 柏原が「山の神」なら、関口はさしずめ「風の神」と言ったところか。生まれは群馬県みどり市。冬場は赤城山からの空っ風「赤城おろし」が吹くことで有名だ。中学から始めた陸上は、自然と風との闘いに。気付けば成田監督も「壊れているのかと心配される。忍者みたいでしょ」と称する走法が出来上がった。

 冷たい強風が吹いた箱根路で、その性質がものをいう。上位争いを尻目に、後方から次々に前を抜く。初出場、大きくなる声援に「どこからこんなに人がくるんだろう」。慣れた風はむしろ味方。周囲が苦戦するなか、「柏原さんと違って凡人です」という2年生が、その記録に比肩した。

 たしかに1時間22分32秒の区間2位は一見すれば平凡だが、この気象条件なら仕方ない。記録の期待は来年にかかるが「次は9区を走りたいんですけど…。ただ5区をまたお願いされたら、チームのためにやりたい」と視線を上げた。この日の朝、宿舎ではシェークスピアの「ジュリアス・シーザー」を読んでいたという自称「変わり者」。新たな山伝説の担い手になる予感は十分だ。【阿部健吾】

 ◆関口頌悟(せきぐち・しょうご)1993年(平5)1月8日、群馬県みどり市生まれ。笠懸中1年で陸上を始めて高崎高へ進み、11年に法大社会学部に入学した。5000メートルは14分26秒39、1万メートルは29分40秒56が自己ベスト。箱根予選会ではチーム2番手の41位だった。趣味は読書。元パイレーツの桑田真澄氏の著書を愛読し、「どんなケースでも全力を尽くす」がモットー。168センチ、55キロ。