<第89回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)
「山の神」が去った東洋大が、山で負けた。5区で柏原竜二(富士通)の後を継いだ定方俊樹(3年)がトップでタスキを受けたが、2校にかわされて3位。史上初の往路5連覇を逃した。首位日体大との差も2分39秒にまで開いた。ただ、一時は30秒以上も離された2位早大とは4秒差にまで縮める粘りで、復路での逆転総合2連覇へ何とか望みをつないだ。
今年は、ほほ笑んでくれなかった。東洋大にあれほど優しかった箱根の山が、敵に回った。5区を任された定方は、初めての箱根でもがき苦しんだ。風速18メートルの強風を受けた最高地点の二子山。「自分だけなのか、頂上が近づくと、止まりそうになって全然進まなかった」。焦りが走りを乱して区間10位。首位で山に挑むも、日体大と早大に逆転された。「目標の往路優勝ができず、しかも離されてしまった。力の差です」。悔しさで肩をふるわせた。
往路4連覇の立役者「新・山の神」柏原が卒業した東洋大の山登り。選ばれたのは、同校OBで箱根を3度経験した父次男さんを持つ定方だった。「自分は神なんかじゃない。自分の仕事をするだけ」。そう言い聞かせて、2位日体大と1分49秒差でスタートした。だが、強風は思いの外、足の力をそぎ落とした。上りの後の下りで、日体大の服部と約1分半も離された。「向かい風や条件が悪いときこそ、こんなに力の差が出るのか」。酒井監督は、唇をかむしかなかった。
アクシデントも痛かった。2、3区に双子のダブルエース設楽啓太、悠太(ともに3年)を配置。「それだけ往路を取るつもりだった」(酒井監督)。3区悠太が区間賞で走り、狙い通りに進んでいた。だが、4区で予定していた今井憲久(2年)が前日に左足首を故障。代役に入った淀川弦太(2年)が区間11位に落ちて、58秒も縮められた。最後に、流れを失った。
山の神が去った大会で、史上初の往路5連覇を逃した。首位と2分39秒。決して小さい差ではない。だが、復路新で走った昨年のような走りができれば-。「定方は最後、よく頑張ってくれた。復路も箱根経験者は多い。トップでゴールしてくれる」と悠太。今年の合言葉は「闘争心をとき放て」。最後の1秒まで、あきらめない。【今村健人】