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注目選手インタビュー 宇賀地強 後編

 実業団男子の駅伝日本一を決めるニューイヤー駅伝が13年1月1日、群馬県庁前を発着する7区間100キロで行われる。ニッカンスポーツ・コムでは本大会に出場する有力選手2人にインタビューを実施。コニカミノルタ主将の宇賀地強(25)編の後半は、トレーニング方法や陸上に対する心構えを聞いた。市民ランナーの参考になる話も盛りだくさんだ。

 聞き手はフルマラソンで2時間43分36秒の記録を持つ市民ランナーの鈴木莉紗さん(28)。

※インタビューは12月3日に行いました。

鈴木:宇賀地選手にとってトラックと駅伝の違いは何ですか?

宇賀地:難しい質問ですね。走っている時にはどっちも1人だし、駅伝も区間で順位もつくし、個人戦であることには変わらないのであまり違いはないですね。強いて言えば、駅伝は終わった後にチームメイトと「ああだった、こうだった」と言い合えるので、そういった楽しみはありますね。

鈴木:勝負への執念は大学時代よりも社会人になって強くなっていますか?

宇賀地:駒大の時は大八木監督という存在がいて、もし結果がダメでも、大八木監督に守られているというところがあったと思います。負けても僕ら自身が責められることはそんなには無かったですからね。社会人になったら、すべての批判が自分に返ってくることが多いので、そういう意味で競技に懸ける責任は大きくなっていると感じてますね。

鈴木:宇賀地選手はとてもファンの多い選手で、特に女性ファンが多いと思います。私は宇賀地選手のねばり強くてがむしゃらな走りに女性が魅力を感じるんだと思っています。ご自身の走りを走りを分析してください。

宇賀地:勝ちきれない中途半端なレースが多いので、決め手を欠いているなーと思います。

鈴木:えっ!そんなイメージはないのですが…?

宇賀地:もっと突き抜けて結果を残したいので、そんなレースが出来るように練習をやっているつもりなんですが、なかなか結果につながってこないですね。細かな部分でまだまだ足りてないのでしょう。難しいですね。

鈴木:駅伝のお話をされているときに「力でねじ伏せる」レースという言葉がありましたが、個人のレースでもそういったレースが理想ですか?

宇賀地:まさに理想はそこです。

鈴木:こんなこと言ったら怒られちゃいそうですが、スマートに勝ったら宇賀地選手らしくないというか、粘って競り勝つのが宇賀地選手らしいと思うのですが…。

宇賀地:どんな形であれ勝つのが大切ですが、それが出来ていないので何か変えなきゃと思ってます。

鈴木:足りない部分を補うためにやっていることは何ですか?

宇賀地:どうしても僕は走りが硬くなりやすいので、不整地であるクロカン練習を多く取り入れて、なるべく力を抜いた状態で進むことを意識して走るようにしています。不整地を走ると力を入れたくなるのですが、逆に進まなかったりするので、力を抜いてうまく身体を動かせるようにしたいと思っています。そういう動きが出来ている時は進みますね。

鈴木:ライバルだと思っている選手は誰ですか?

宇賀地:いっぱいいるんですが、あえて言えば駒大の同期だった選手は常に意識してますね。

鈴木:モチベーションをアップさせるようなグッズや、験かつぎなどはありますか?

宇賀地:モチベーションに関しては特にないです。というのは僕は特別にやる気が出るという状態になることはないし、逆にモチベーションが欠如するということもないです。常に陸上に対しては同じような精神状態で臨んでます。

鈴木:(気持ちに)波がないということですか。

宇賀地:はい。僕は陸上から離れたいとか、走りたくないとか、練習したくないということが無いんです。逆にメチャメチャ走りたいということもありませんけどね(笑い)。モチベーションという意味では、精神状態は常に一定ですね。もちろん大会では緊張はしますけど。

鈴木:験かつぎもないですか?

宇賀地:スタート前に神頼みしてます(笑い)。「無事に走りきれますように」って。

鈴木:練習の時に工夫していることはありますか?

宇賀地:練習の時もレースをイメージして走ってますね。

鈴木:2013年はモスクワ世界陸上が、16年にはリオデジャネイロ五輪があります。そういった世界大会に向けての目標を教えてください。

宇賀地:世界陸上には1万メートルで出場します(キッパリと断言)。五輪を見据えて長期的に考えなきゃいけないのかもしれませんが、目の前のことを1つずつやっていこうと思っているので、まずは世界陸上です。

鈴木:尊敬する選手は誰ですか?

宇賀地:僕が駅伝にのめり込んだきっかけは、作新学院高、駒沢大の先輩の佐藤慎悟さん(29=八千代工業)の走りを見たからです。

 僕が中3でそこそこの結果を残して、高校でも陸上を続けることになった時に、初めて真剣に箱根駅伝を見ました。その時に佐藤さんが駒大で3区を走っていて、選手紹介のテロップを見たら栃木出身で、作新学院で、というのを見て勝手に親近感を覚えてしまいました。しかもその年、駒大が優勝したので「わー、こんなすごい人がいたんだ」って、あこがれるようになりました。その後、お話する機会もあって、佐藤さんがレベルの高い話をしてくださったので、世界を広げていただきました。目標ですね。

鈴木:私はレース前にウナギを食べるのですが、勝負メシはありますか

宇賀地:うーん。特にはないです。「何か食べないと…」と決めておくと、試合で遠征したときに、それがないと困ってしまうじゃないですか。これまで海外遠征も何度かあるんですが、そういう時に「勝負メシ」が無いと困りますよね。なので、その場にあるものを食べています。

 昔は、朝ヨーグルトを食べるとか、飲み物もこの銘柄の水じゃないとダメだとかたくさんあったんですけど今はなくなりました。逆にその食べ物があってもダメな試合もありましたから。

鈴木:ステキな筋肉ですよね。補強をしてますか?

宇賀地:会社に入ってから専属のトレーナーさんに見てもらうようになって、補強に対する意識が変わりましたね。大学までは漠然と腹筋とかやってましたが、今はどういう筋肉が走りにつながるのか意識しながら筋トレをしています。強度的には(大学時代より)下がっているかもしれませんが、今の方が効果的な補強をしていると思います。

鈴木:休日はどうやって過ごしていますか。

宇賀地:日曜はチームとしての集合がないので、とにかく寝るようにしてます。10時間睡眠が目標です。ひたすら寝てます。

鈴木:この時期、1日の練習はどんなタイムスケジュールですか?

宇賀地:うちのチームは6時から朝練が始まるのですが、5時15分ぐらいには起きてアップしてから朝練をしてます。朝は8時半に始業で、この時期は早く日が暮れるので14時半までが業務です(夏は15時半まで業務)。15時半ぐらいからアップして、16時から1時間半から2時間練習します。走る距離は朝練では50分間で12キロぐらい、午後は人によりますが、僕はジョギングだったら80分から90分程度で17〜18キロ走ります。1日トータル30キロぐらいですね。

鈴木:コニカミノルタは社業と練習を両立しないといけないですよね。練習だけに打ち込みたいとは思いませんか?

宇賀地:うちの場合は会社のサポートがあるので、キツイ練習の時には午後に身体のケアをする時間も含めて、丸1日練習をさせてくれる日もあります。逆に全く会社に行かないチームの話を聞くと、暇な時間は何してるのかと思いますね。1週間程度なら練習ばかりもいいですけど、年間通して練習ばかりだと、逆にキツイんじゃないかと感じます。

鈴木:宇賀地選手にはストイックに筋トレをやって、陸上に打ち込んでいるというイメージがあり、陸上ファンからも注目されているのだと思います。そういった状況をどう思いますか?

宇賀地:全然ストイックじゃないですよ。たいした選手じゃないのに、修行僧みたいなイメージで見られるのは応援してくれている方々に対して申し訳ない気持ちです。でも注目されるのはイヤじゃないです。やる気も出るし。でも僕自身を誇張されて伝えられているのは、本当に申し訳ないです。全然、そんな選手じゃないんですよ。特に学生時代は、箱根駅伝があって、かっこよくマスコミが取り上げてくれたんですけど、ホントにそんな選手じゃないんですよ。僕以上の僕を作り上げるのはやめてほしいです。そんな自分じゃないから…。

(宇賀地強編おわり)

◆宇賀地強(うがち・つよし) 1987年(昭和62年)4月27日、栃木県宇都宮市生まれ。栃木・作新学院高時代は3年時に全国都道府県対抗男子駅伝の1区で区間賞を獲得。駒大では箱根駅伝で4年連続2区を走った。2010年にコニカミノルタ入社。同年10月の世界ハーフマラソン選手権出場。2011年2月の香川丸亀国際ハーフでは日本歴代3位の1時間00分58秒を記録。1万メートルのベストタイムは27分40秒69。

◆鈴木莉紗(すずき・りさ) 1984年(昭和59年)9月7日生まれ。2011年上半期にランニング雑誌「ランナーズ」の表紙を飾った美人市民ランナー。もともとは普通のOLだったが約3年前に走り始め、1年半でサブスリーを達成。フルマラソンのベスト記録は2時間43分36秒(2012年2月東京マラソン。日本人女子10位)。今年11月18日の横浜国際女子マラソンにも出場した。現在は加圧ジムのトレーナー。

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