<世界陸上:目覚めよニッポン>マラソン復活への提言(下)

 本紙評論家・瀬古利彦氏(55)の第2回は、世界選手権で男女マラソン日本代表選手が、どこまでやるのかを占ってもらった。男子マラソン復活を熱く語った前日とは打って変わり、ユニークな「瀬古節」がさく裂。マラソンの神髄を知る男ゆえの、掛け合いトークをご堪能あれ。

 -瀬古さんも(88年の五輪で)ソウルを走ってますけど。真夏の韓国は

 瀬古氏

 暑い、暑い。日本と一緒。だから日本と同じだと思ってやらなきゃ。暑いといっても北京五輪みたいに(ワンジルが)2時間6分で行っちゃう。

 -コースも2周半みたいな。どういう展開に

 瀬古氏

 1回試走できる。覚えるから走りやすい。高低差も40メートルだからね。涼しければ速いし、遅くても、暑くても、後半はむちゃくちゃ速くなる。日本人が戦うには後半までペースを維持し、相手が落ちていくのを拾っていくしかない。

 -男女メンバーを見てメダルが取れそうな選手は

 瀬古氏

 女子は期待できる。尾崎と赤羽が安定している。経験もあるし、力を発揮できる。でも男子はきついね~。入賞、10番以内に入りたい。ただ尾田はスピードがあるので期待しているよ。30歳で選手としても脂が乗りきっている。マラソンも今回が2回になるので、踏ん張りどころが最初は分からないけど、今度は体が覚えているから踏ん張れる。

 -昨年のアジア大会銀メダルの北岡もおもしろい

 瀬古氏

 勝負かけていくタイプじゃない。アジア大会なんて最高。急になんか、後半になると「北岡出てきたよ」みたいな。「あれ、いなかったのに」みたいなレースができれば。「忘れたころの○○」がキーワード。死んだふり作戦だ。いかに自分に負けないで最後まで走れるか。自分に勝ったやつにあっぱれ、負けたやつにカツだね。

 -ちなみに女子は

 瀬古氏

 尾崎は銀メダルだった前回、相手に利用されて惜しいところでやられた。今回は前のようにならないように。赤羽も途中までいればおもしろい。今回はベテランから若手までいいメンバーだ。ただタイムは伸びてない。でも世界も落ちている。

 -その理由は

 瀬古氏

 分からない。ラドクリフもどっこいしょ(休養)しちゃってるし。今のうちに勝たないと。世界がちょっと寝たふりしているから、ここは寝た子を起こさないように。「寝た子を起こさない」作戦だ。

 -来年のロンドン五輪まで寝てくれますか

 瀬古氏

 まぁ、チャンスじゃない。(女子の世界ランク2位)ショブホワだって、ロシア人は暑いの得意そうじゃないし。韓国は日本と同じで時差もない。アウェーじゃなくホームだよ。

 -ところで注目の公務員・川内君はどうでしょう

 瀬古氏

 調子よければ行くし、ダメならしょうがない、というケツまくった走り方ができるのがいい。どっかで倒れてもたまたま悪かっただけ、次は大丈夫と思って走っている。でも2月の東京のタイム(2時間8分37秒)、83年の俺より1秒速い(当時世界歴代3位)。本当にショックだよ。あの時の俺の方が強かったと思うんだけど。【取材・構成

 佐藤隆志】