陸上の世界選手権は明日27日に開幕する。女子短距離の福島千里(23=北海道ハイテクAC)は、大邱をさらなる高みへのステップにするつもりだ。08年北京五輪、09年世界選手権ベルリン大会(ドイツ)に次ぐ3度目の世界の大舞台。12年ロンドン五輪に向けて、多くの点を1本の線でつなぐため「1本でも多く走ること」を誓った。
進化が止まらない。それを象徴する出来事があった。福島は、今季初戦だった4月の織田記念国際の女子100メートル決勝で左足にけいれんを起こし、棄権。5月中旬のゴールデンGP川崎大会同100メートルでも再び違和感を覚えゴール前で失速し4着に終わった。
大会後、指導する中村宏之監督(66)の自宅を1人で訪ねた。走りたい思いと周囲の考えとの微妙なズレに苦悩し、初めて内に秘める思いをぶつけた。自分で納得して解決することが多かったこれまでとは違う異例の行動だが、それがそのまま世界への思いの強さの表れだった。中村監督も「心も体も日々、成長している」と話す。
100、200メートルの個人種目のほか、400メートルリレーにも出場する。43秒30を目標に、決勝進出を狙う日本チームの中心に福島がいる。「みんなで力を合わせて決勝に行きたい」と話し、普段から誰よりも多くメンバーに声をかけムードを盛り上げる。親友でライバルの高橋萌木子(富士通)も「すごく変わった」と変化を感じとるほど、女王には自覚が芽生えている。
五輪前年のシーズンに迎える大会。ここもあくまで通過点に過ぎない。「すべてはその先につながっている。1つ1つの大会を意味のあるものにしたい」。
3年前、56年ぶりに同100メートルで五輪に出場した。ベルリン大会では女子で初めて2次予選に進出と歴史を塗り替えてきたが「“初”って付かないで、それが当たり前になるようにしたい」と話す。世界への渇望が女王を突き動かしていく。