<世界陸上>◇27日◇女子マラソン◇クッチェボサン運動記念公園(韓国・大邱)発着の42・195キロ
女子マラソンの「なでしこ」がメダルを逃した。アフリカ勢のスピードに付いていけず、日本勢は赤羽有紀子(31=ホクレン)の2時間29分35秒での5位入賞が最高。前回銀メダリストの尾崎好美(30=第一生命)は2時間32分31秒の18位に沈んだ。「日本人最上位でメダル獲得」という条件で来年のロンドン五輪切符がかかっていたが、05年ヘルシンキ大会以来の3大会ぶりにメダルなし。上位3選手に合計タイムで争う団体戦も4位に終わった。エドナ・キプラガト(ケニア)が2時間28分43秒で初優勝し、ケニア勢が表彰台を独占した。
大邱の街に、なでしこの花は咲かなかった。前半からスローペースでレースは進み、周回コースを2周した30キロから一気にペースアップ。32キロ付近、満を持してケニア勢のキプラガト、チェロップ、ジェプトゥーが一斉に飛び出した。エチオピアのベケレも鋭く反応。尾崎、中里ら日本勢は後方に取り残された。
そこから赤羽が必死に食らいついたが、表彰台を独占したケニア勢のスピードが一枚も二枚も上手。30キロまでの5キロ18分台ペースが、30~35キロは16分45秒へ急上昇。35~40キロのキプラガトは16分10秒だ。「切り替えのスピードがすごすぎた」と赤羽。終盤のロングスパートをもくろんでいた尾崎も「レベルが全然違った」。ロンドン五輪がかかったレースで、日本勢にあらためて課題が突きつけられた。
日本代表の河野匡ヘッドコーチが「日本人のスピード能力は低い。今回のレース展開は不利だった」。前半からのスローペースは、結果的にアフリカ勢に余裕を持って飛び出させた。さまざまなレース展開を想定して臨んだ尾崎があえなく翻弄(ほんろう)され、第一生命の山下佐知子監督は「尾崎は別として、体が動いていた赤羽さんでも勝負できていなかった。ついに女子もアフリカ旋風がきたのかな」と話した。
今大会は、現世界ランク1位ケイタニー(ケニア)、2位ショブホワ(ロシア)が不参加。優勝したキプラガトを除けば、決して超一流というわけではない。河野ヘッドコーチは「赤羽ら選手は戦ったと思うが、女子マラソンはメダルを取れないと評価されない」。ロンドン五輪に向け、取り組みの改善を迫られた。【佐藤隆志】