<世界陸上>◇1日◇女子やり投げ予選◇韓国・大邱スタジアム

 女子やり投げの海老原有希(25=スズキ浜松AC)が、世界選手権の女子投てき種目で初めての決勝進出を決めた。予選3本目に59メートル88を記録し、全体10位で通過。今日2日の決勝で、自身の日本記録(61メートル56)更新と、五輪出場の条件となる8位入賞を目指す。

 「女・村上」海老原が、世界のファイナリストとなった。快晴の大邱の空めがけて投げた3投目。予選突破ラインの60メートルには届かなかったが、59メートル88。チームの先輩で目標とする男子やり投げの村上幸史から「お前がはずみをつけろ」とはっぱをかけられて臨んだ試合。決勝進出12人に10番目で名乗りを上げた。

 海老原

 予選ラインを越えられなくて残念ですが、精いっぱい投げました。1投目(57メートル36)がもっとよく投げられたら、その後もいい流れになったと思う。村上さんが言うように、1投目が重要でした。

 女子の投てき種目では初の快挙にも、大台に乗せられなかった悔しさが入り交じった。164センチ、68キロ。一般女性と比較しても決して大きくない。しかし、その体は運動能力の塊だ。尊敬する村上と同じく野球出身で、少年野球では俊足の1番内野手。地肩の強さは男の子にも負けなかった。中学ではバスケットボールで俊敏性に磨きをかけ、真岡女子高入学後に陸上部でやり投げを始めた。

 現在は都内のスズキ販売店で午前中に働き、週5回は母校・国士舘大で練習を積む。村上との接点は普段ないが、折に触れ、多くのことを学んだ。一番印象的な言葉は「投げ出すところでは結果を変えられない」だ。ラストクロス(最後のステップ)までに磨きをかけた。もともと助走スピードが高く、地肩が強い。そんな特長を生かした投てきが出せるようになり、結果が伴うようになった。

 座右の銘は「弱気は最大の敵」。炎のストッパーと呼ばれた元広島津田の言葉だ。不屈の闘志を秘め、決勝で狙うは8位入賞。予選8位は60メートル50とあって、自ら持つ日本記録61メートル56を更新すれば、五輪参加A標準記録(61メートル50)の突破を含めて可能性は高まる。「予選は体の開きが早く、投げる方向が右にずれた。そこが一致すれば記録は伸びる」。前回銅メダリストの村上にならい、新たな歴史に挑む。【佐藤隆志】