<第87回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)

 過去総合14位が最高の国学院大が、監督を乗せた伴走車が事故を起こすアクシデントを乗り越えて、往路チーム最高の6位でゴールした。

 山登りの5区、6キロ付近の函嶺洞門を出た直後に、前田康弘監督(32)を乗せた伴走車が、Y字路で右に曲がるところを直進。遅れて右にハンドルを切ったが、大きく膨らみ観客3人に接触した。運転手の足がつったのが原因。幸い、接触した観客は大事には至らなかったが、監督は車を乗り換えなければならず、最長区間の難所で、選手への給水が最後までできなかった。

 その苦境を救ったのが5区で12位でタスキを受けた主将の仁科徳将(4年)だった。序盤に起きた事故のことは知らず、「監督、声かけてくれないな~。まあ、いいか」。2秒差の11位でタスキを受けていた城西大の田村(3年)と並走。腰高の独特の走法でピッチを刻み、2人で次々に選手を抜いた。最後は田村にも34秒差をつけ、区間4位の記録で6人抜いてゴールに飛び込んだ。

 大学では神道文化学部に通う。「神社のことを学んでいる」という学生らしく、3つのお守りを携えて走った。父が神主を務める徳川家康公を祭った地元静岡の久能山東照宮、箱根神社、そして昨年12月23日に必勝祈願に訪れた明治神宮。タスキにも監督が伊勢神宮のお守りを縫い付けていた。「神だらけですけど、神道は八百よろずの神だから、きっとけんかはしませんよ。助けてもらいましたね」と白い歯をのぞかせた。

 予選会では前年から13位も順位を上げて2位通過した。周囲からは「まぐれ」という声もあったという。それだけに「悔しかった。実力で勝ち取った箱根。本番でも実力を示せた」と仁科。「事故はびっくりしたけど、僕がいなくても大丈夫ということですかね」と苦笑いしながら仁科に感謝した前田監督の表情からは、初シード獲得への自信もうかがえた。【阿部健吾】