<第87回箱根駅伝>◇2日◇往路◇東京-箱根(5区間108キロ)
早大が93年以来18年ぶりの総合優勝と、史上3校目となる3冠に向け、往路優勝の東洋大と27秒差の2位につけた。1区の1年生、大迫傑がスタートダッシュに成功。1区の1年生としては最高タイムの1時間2分22秒で区間賞を奪うと、4区まで首位を維持。5区で東洋大の柏原に抜かれたが、最初で最後の箱根となった猪俣英希(4年)が踏ん張り、差を想定した1分以内に抑えた。渡辺康幸監督は、復路で3人のメンバー入れ替えを明言。6区山下りの高野ら、厚い選手層で念願の3冠と総合優勝に挑む。
早大5区の猪俣はすべてを出し切った。最初で最後の箱根。卒業後は陸上もやめる。競技人生最後の時を、この山登りにかけた。「(柏原に)抜かれたのは悔しかったけど、笑顔が出そうなぐらいすてきな夢舞台でした」。1時間21分14秒は区間9位だが、耐えに耐えて、東洋大との差をわずか27秒に抑えた。
ゴール後、足元がふらつく猪俣は、必死で「すいません、すいません」と逆転されたことを謝った。しかし、早大OBの瀬古利彦氏が抱き締め、慰めた。「まったく問題なし。おまえの仕事を立派にした!」。猪俣に笑顔が戻った。
区間配置が見事に当たった。1区に強豪が来ないと読み、大物ルーキーの大迫を配置。その起用に大迫は、1年生最高タイムの区間賞で応えた。早々と1・3キロ地点で前に出た。11キロ過ぎで追走する日大を振り切ると、そのままぶっちぎり。「区間賞は想定通り。自信はあった」と豪語した。
1区で8位だった東洋大との差は2分1秒。それが4区を終わり、2分54秒まで広がった。しかし、過去2年連続で東洋大の柏原は4分以上の差を逆転していた。その例で言えば、逆転されて2分近い差をつけられることも考えられた。その中で、座骨神経痛の佐々木に代えて抜てきした猪俣が踏ん張った。渡辺監督は「区間配置は100点。さえてるね!」と自画自賛だ。
往路優勝こそ逃したが、早大にとって27秒差は、想定内のタイム差だ。当初の予定は1分以内だっただけに上出来といえる。渡辺監督は「(これで)勝てるという計算は立った。山登りが、このぐらい(の差)で終わって良かった」と自信満々だ。
6区の山下りには絶対的な自信を持つ。山下りを中心に強化してきた高野寛基(4年)は「(4年連続で6区を走った加藤に)迫る選手。6区で前に出れば6~7割は勝てる」と渡辺監督は信頼を寄せる。7、9、10区の選手交代も明言し、選手層の厚さで畳み掛けるつもりだ。
22秒差の2位で復路に挑んだ09年は、6区で首位に立ちながら引き離せず。8区で逆転され、東洋大に手痛い敗退を喫した。しかし今回、「復路勝負と選手には伝えてある。(選手の)つぶし合いになる練習は積んできた」(渡辺監督)。壮絶な生き残りで、3冠の夢を必ずつかみ取る。【吉松忠弘】