<第87回箱根駅伝>◇3日◇復路◇箱根-東京(5区間109・9キロ)

 史上6校目の3連覇に、わずか21秒及ばなかった。往路優勝の東洋大は2位早大に27秒差をつけて復路に臨んだが、最初の山下りの6区で早大に逆転されて引き離された。それでも8区以降は3区間連続の区間賞で猛追し、昨年までの総合記録を3分5秒も上回る王者の意地を見せた。往路優勝の立役者になった「新・山の神」柏原竜二(3年)も、涙をこらえて来年の雪辱を誓った。

 目をそらさずに見つめていた。5メートル先で行われた早大の歓喜の胴上げを、東洋大の選手たちは最後まで見届けた。前日はうれし泣きした柏原は涙をこらえた。「泣いたら気持ちが晴れてしまう。この悔しさは泣いて晴らすのでなく、走って晴らしたい」。酒井監督は「3連覇の山が、これでもかという高さだと思い知らされた」と声を震わせた。

 険しかった3年目の頂。それでも史上最高の優勝争いだった。27秒リードでスタートした6区で激しい抜き返しの応酬。36秒差をつけられ、7区では1分24秒差に広がった。だが、8区の千葉(4年)が詰めると、9区では前日に柏原に絶叫された田中(3年)が意地を見せた。「ちゃんと走って『田中』が誰だか分かってもらいたかった」。昨年7区に続く区間賞で差は40秒に縮まった。アンカーの山本(3年)がタスキを手にしたとき、えんじの背中は見えていた。

 柏原、田中と同じ3年の山本も飛ばした。追い上げた。迫る早大の背中。16・4キロの田町で差はわずか22秒になった。だが、ここまでだった。最後は史上最小差の21秒、約116メートル差。これまでの駒大の記録を3分5秒も上回ったが、酒井監督は選手に「頑張ったけど勝負に負けた。悔しかったら努力するしかないんだよ!

 ワセダは昨年の7位から優勝してるんだよ!

 乗り越えられなかった山を、来年上り詰めよう」と、涙を流しながら呼びかけた。

 柏原ら箱根で勝ち続けてきた主力が初めて味わう敗北。酒井監督は敗因を「勝利への執念の違い」と言った。箱根前に故障者を恐れず追い込み合宿を行った早大と、ケガ人が多く夏合宿すら満足にこなせなかった東洋大。「早大の走りが思った以上に良かったのが想定外。残り5キロで詰められなかった。執念でしょうか…」。

 早大も駒大も、明大にも強い選手が残る。来年の奪冠は3連覇以上に険しくなる。柏原は「負けて成長することがある。来年は2区でも5区でも9区でも、頼られる区間に配置されたい。もう1度、監督を胴上げしたい」。悔しさを胸にしまい込んだ。【今村健人】