<高校ラグビー:札幌山の手29-0和歌山工>◇27日◇1回戦◇花園

 南北海道代表の札幌山の手が、和歌山工を破り5年連続の初戦突破を果たした。前半17、19分にNO8籾山拓己(3年)の連続トライなどで流れを引き寄せて快勝。30日の2回戦では黒沢尻工(岩手)と対戦し、初のシード校撃破、3回戦進出を目指す。

 重苦しい雰囲気を一気に変えたのは快足のNO8だった。前半17分に先制トライを決めた籾山が、その2分後、自慢のステップを披露した。ハーフウエーライン中央でのスクラムから、右サイドをスルリと抜け出した。左手で相手の動きをけん制し、4~5人のタックルを巧みにかわす。約50メートルの激走トライだった。

 50メートル6秒1のチームNO・1の俊足がここ一番で結果を出した。「独走は気持ちよかったです。直前合宿で練習試合した東福岡(花園2連覇中)にもサイド攻撃は通用したので自信はありました」。前半だけでチームの反則10個とリズムを作れなかったが、主導権を大きく握る連続トライ。5年連続の初戦突破につなげた。

 大会直前に“事件”が起きた。今年はチームワークが課題と言われ続け、春先には主将交代や、試合出場させない謹慎処分など、不安を持ちながら何とか勝ち進んできた。そんな状態で、チームは16日から毎年恒例の福岡合宿に突入。期間中に毎日行っている「朝の散歩」に下級生が遅れてくることがあった。

 フッカー佐藤諒太主将(3年)は「そのことで後輩をしかったら、大もめになってしまいました」。それまでたまっていたお互いのうっぷんが吹き上がり、険悪なムードとなった。佐藤主将は「大会直前でこんな状態では勝てないと思った。全員でちゃんと話し合いました。雨降って地固まるってとこですね」。チーム全体で話しあいの場を持ち、意見を言い合ったことで逆に結束力が生まれた。最後の最後にチームが1つになった。

 2回戦はシード校の黒沢尻工と対戦する。2トライを挙げた籾山は「山の手が越えられなかった(シード校の)壁を越えます」。チーム一丸となって「5度目の正直」で、悲願の2回戦突破を目指す。【黒川智章】