<高校ラグビー:東福岡29-21桐蔭学園>◇3日◇準々決勝◇花園

 連覇を狙った桐蔭学園(神奈川)が、昨年優勝を分け合った東福岡(福岡)との「再戦」に敗れた。一時は13点のリードを許しながら、FB鈴木亮(3年)のトライやPGなどで逆転した。だがすぐに再逆転を許し、敗戦。念願の単独優勝は来年以降にお預けになった。

 ノーサイドの笛に、鈴木はひざから崩れ落ちた。「スローガンにしてきた、つなぎのラグビーはみせられたけど…悔しいです」。ショートパンツのすそに縫い付けられた「繋」の文字がむせび泣きに震えた。

 8点を追う後半15分、中央を突破しトライ。「あと1点!

 逆転できるぞ!」と味方を鼓舞すると、3分後に逆転PGを決めた。昨年の決勝でPGを2本失敗。21点差を追いつかれての同校優勝に「1本でも決めていれば」と自責した。次の花園では大事なキックを決めて、単独優勝を引き寄せたい。その一心でキック練習を重ねた。

 新チームではFBを任されたが、超高校級と言われた先輩FB松島との比較にも苦しんだ。「松島さんはすごすぎて参考にならない。キックや声出しとか松島さんにない部分で勝負しよう」。W杯や社会人などの試合ビデオを見まくり、自分なりの理想のFB像をつくりあげた。

 去年より小粒と言われるチームで、それぞれが鈴木と同じく悩んでいた。8月の合宿では乱闘寸前のつかみ合いもあった。今大会でも2試合連続逆転勝利と苦戦。だがもがき苦しむ中でチームはまとまり、大一番でついに「つなぎのラグビー」が完成した。小柄な選手たちが、体格で上回る東福岡と、連動性と機動力で互角以上に渡り合った。

 「点も取られたけど、自陣からでも60分間つなごう、と思ってやった結果。後輩たちにはつなぐラグビーで、単独優勝を勝ち取ってほしい」と鈴木。2年越しの因縁は終わり、理想を追い求める志だけが受け継がれた。【塩畑大輔】