ナニワの急成長男が、大一番の切り札になる。全国高校ラグビーは今日5日、大阪・花園ラグビー場で準決勝2試合が行われる。13大会ぶりの決勝進出を狙う常翔学園(大阪第2)は、同じAシードで史上5校目の3連覇を目指す東福岡(福岡)と対決。高校入学後に身長が17センチ伸びたWTB松井千士(ちひと、2年)が、50メートル5秒9の俊足を武器にして王者へ挑む。
体も能力も伸び盛りの2年生が、王者撃破へ名乗りをあげた。Aシード校同士の大一番に備え、4日は約1時間の軽めの調整で切り上げたWTB松井が、大きな目を光らせた。
「東福岡は強いチーム。チームプレーじゃないと勝てない。僕はトライを取らないと。頑張りたい」
驚異の成長を見せている。高校入学時は163センチ、54キロだった体は2年足らずの間に180センチ、70キロと大きくなった。「毎晩丼飯を3杯食べて、寝る前もプロテインを飲んでます」。体の成長に連れて走力もつき、50メートル5秒9はチーム最速だ。今大会では途中出場だった2回戦でトライを奪うと、上田主将ら3年生の信頼度が増し、3回戦からは先発に名を連ねた。3試合で4トライの活躍で、レギュラーの座を奪った。
常翔学園の“申し子”だ。自宅は自転車で15分、小1から大工大高(旧校名)ラグビースクールに通っていた。小6だった06年度準決勝の東福岡戦もテレビで見ていた。10-53と完敗した試合に「強い大工大高でも、大差で負けるのか」とショックを受けた。今回は、先輩たちのリベンジをするチャンスでもある。
東福岡BK陣には、7人制日本代表のFB藤田がいる。トライを奪うには、超高校級の猛者が“最後のとりで”として立ちはだかるが、松井は「自分がどこまで通用するか、やってみたい」と強気だ。同じWTBの兄謙斗が所属する天理大は、大学選手権で初の決勝進出を決めた。弟も、01年度以降5連敗している準決勝の壁を乗り越え、16大会ぶり5度目の頂点へ王手をかける。【木村有三】
◆松井千士(まつい・ちひと)1994年(平6)11月11日、大阪市旭区生まれ。6歳からラグビーを始める。家族は父尚治さん、母由紀さんと兄謙斗(天理大2年)。今大会は6トライのFB重一生(2年)に次ぐチーム2位の4トライを挙げている。180センチ、70キロ。