<バレーボール・全日本高校選手権:相馬2-1習志野>◇5日◇男子1回戦◇東京体育館

 被災地の思いを背負った相馬(福島)が、セットカウント2-1で習志野(千葉)に逆転勝ちし、2大会ぶりの全国白星を挙げた。

 相馬の執念が、大逆転勝利を呼び込んだ。もう後がない第2セット。吉田康宏監督(41)の言葉で、選手の闘争心は燃え上がる。「食らい付け。諦めなければ何とかなる」。最大4点差をひっくり返し、第3セットはアタッカー陣のスパイクが次々と決まった。対角レフト佐々木章仁主将(3年)は「この舞台に立つのは夢に近かった。勝つことができて、恩返しになったんじゃないかと思う」と、かみしめるように言った。

 震災後、部員24人は県内外に避難。吉田監督は、携帯電話で数日おきに全員と連絡を取り、心のケアに努めた。1カ月半後に練習を再開。しかし体育館は壊れ、昨年10月中旬まで十分な練習時間を確保できなかった。家を、家族を失った者もいる。でも、全員がバレーを求めていた。リベロ浜名亮(3年)は、弟東(ひがし)さん(享年14)を亡くしたが「弟の分まで頑張る気持ちでやってきた」。この日は、体を張ったレシーブで再三のピンチを救った。

 丸刈り頭に巻かれた「若駒が今を変える」の鉢巻き。これまで「相馬」だったが、インターハイから新調した。レフト佐藤郁也(3年)は「福島を、自分たちはバレーで変えていこうという気持ちを込めた」と全員の意志を代弁した。今日6日の2回戦の相手は強豪・市尼崎だが「自分たちのプレーで、福島が元気になってくれたらうれしい」(佐々木)。苦難を乗り越えた若駒たちは、簡単に倒れない。【今井恵太】