<高校総体:競泳>◇19日◇男子200メートル背泳ぎ決勝ほか◇新潟・長岡市ダイエープロビスフェニックスプール

 スーパー高校生の萩野公介(栃木・作新学院)が、本職の個人メドレー以外でも世界レベルの泳ぎをみせた。1年ぶりに泳いだ200メートル背泳ぎで1分55秒81の高校新記録を樹立。ロンドン五輪でも6位相当のタイムで、同五輪銀メダリスト入江陵介(22)の高校時代の記録(1分56秒53)を大きく上回った。個人メドレーの強化のための出場だったが、底知れぬ可能性を披露。「入江さんが目標」と、ライアン・ロクテ(28=米国)のように背泳ぎとの「二刀流」も宣言した。

 右手を何度も突き上げながら、萩野はスタンドの歓声に笑顔で応えた。正面、右、左と頭を下げる。「選手紹介で銅メダリストとアナウンスされたんで、高校新が出せてよかった」とインタビューに答えた。「萩野総体」の主役は、メダリストの貫禄を漂わせた。

 泳ぎも貫禄十分だった。本職ではない背泳ぎ。それでも、他を寄せ付けなかった。急成長の砂間を左に、100メートル背泳ぎを制した川本を右に従えて、トップで100メートルをターン。「前半は少し抑えて、100~150メートルでスパートした」。あっという間に2位以下に大差をつけ、ぶっちぎりでゴール板をたたいた。

 初日の400メートル自由形は前半ゆっくり入りすぎて記録更新を逃した。直後の男子200メートル平泳ぎで親友でもある山口が驚異的な高校新をマーク。「あれで、やる気スイッチが入った」と振り返る。山口とのツイッター上でのやりとりで「高校新を出す」と宣言し「主役の座」を奪い返した。

 「55秒台が出たので、うれしい」と話すタイムは、ロンドン五輪なら6位に相当。昨夏の国体以来1年ぶりの背泳ぎ挑戦で、いきなり世界をとらえた。それでも「最後のタッチやターンを合わせることとか、上の記録を目指して、まだまだ改善すべき点はある」。少しも満足した表情はない。

 今大会は個人メドレーを回避し、気分転換と個人メドレーの強化を兼ねて自由形と背泳ぎに挑戦した。リオデジャネイロ五輪で狙うのは個人メドレーの金メダルだが、好タイムが出たことで背泳ぎにも可能性が出てきた。「もともと背泳ぎはやっていたし、入江さんの記録が目標」と、個人メドレーと背泳ぎで五輪金メダルを量産したロクテばりの「二刀流」を口にした。

 自由形も強い萩野には、フリーリレーのメンバーとしての期待もかかる。そうなれば、完全に「和製ロクテ」だ。スタミナ面などの問題はあるが、それもこれからの強化次第となる。初出場の高校総体の印象を聞かれて「みんな若いのに、頑張っている。僕も若いけど」と苦笑いした萩野。その目は日本の高校レベルを飛び越えて、世界のトップレベルを見ている。【荻島弘一】

 ◆個人メドレー選手の二刀流

 個人メドレーと背泳ぎで五輪金メダルを持つロクテ(米国)やバタフライと自由形でも五輪金のフェルプス(米国)ら、複数種目を泳ぐ選手は多い。ロンドン五輪400メートル個人メドレー5位のチャド・レクロー(南アフリカ)は、男子200メートルバタフライの金メダリスト。08年北京大会200メートル、400メートル個人メドレーでともに銀のラースロー・シェー(ハンガリー)は200メートルバタフライでも銀メダル。ただし、個人メドレーは特に体力を必要とする種目。掛け持ちするのはスタミナが不可欠。

 ◆萩野公介(はぎの・こうすけ)1994年(平6)8月15日、栃木・小山市出身。生後5カ月から水泳を始め、羽川西小1年夏に名古屋市・御器所(ごきそ)小へ転校。東海イトマン鯱(しゃち)で頭角を現し、3年春に小山市へ戻ると宇都宮市のみゆきがはらSS入り。作新学院中-作新学院高3年。高1時の10年4月、日本選手権400メートル個人メドレーで2位となり、初の日本代表入り。175センチ、70キロ。