<世界柔道>◇27日◇男子100キロ級ほか◇パリ・ベルシー体育館

 日本の男子重量級が惨敗した。2連覇を狙った100キロ級の穴井隆将(27=天理大職)と、全日本王者で100キロ超級の鈴木桂治(31=国士舘大教)が3回戦で敗れるなど、4選手全員が敗者復活戦すら逃した。男子は個人7階級14選手で金2、銀2、銅1に終わった。女子78キロ超級の杉本美香(27)は3位決定戦で田知本愛(22)を破り、銅メダルを獲得した。女子のメダルは金3、銀4、銅3。前日の大会4日目は、女子78キロ級の緒方亜香里(20)と男子90キロ級の西山大希(20)が銀メダルを獲得した。

 ふがいなく、あまりに早い終戦だった。個人戦最終日の5日目。日本男子は誰ひとり、午後のメダルを懸けた舞台へ進むことができなかった。篠原監督は開口一番「まったく想像していませんでした」と嘆いた。重量級で3大会ぶりの3度目のメダルなしだが、3位決定戦にも進めなかったのは初めてだ。量産を狙った最後に落とし穴が待っていた。

 けちのつけ始めは昨年の無差別級を制した上川の1回戦敗退からだった。指導2つを取られて、何もできずに敗れた。高木も初戦の2回戦で敗戦。すると、とたんに負の連鎖が始まった。エース穴井は北京五輪90キロ級王者のチレキゼに小外掛けで一本負け。最後に残った鈴木も指導3つを受け、一発逆転を狙った最後残り0秒に、小外刈りによる技ありを奪われて散った。

 上川は「情けない。こんな柔道をしていたら、五輪は無理」と掃き捨て、穴井は「昨年の優勝からの道のりが正しかったのか、今は整理がつかない。心にすきがあったのか…」とぼうぜん。鈴木は「チャンスというチャンスをつくれずに終わった。(重量級が早々に負けて)本当に申し訳ない」と頭を下げた。

 大会1、2日目の軽量級で金メダルを取り、かつてない好スタートを切った男子。勢いに乗ったかに見えたが、最後に尻すぼみにあった。篠原監督は「上川は論外。それ以外はもっと論外。超級の代表争いは大混戦どころか、代表するような選手がいない」とバッサリ。その上で「上川は意識が低い。気持ちを入れ替えなければ切る。高木は進歩がない。穴井はなんであんなにビビリなんだ。東京でずっとやらせる。あいつが(自宅の)天理に帰る時間はない。桂治はもう経験と足技ではカバーできない」と厳しく言い放った。世界の潮流となっているパワー柔道。来年のロンドン五輪へ、厳しさを痛感する終幕だった。【今村健人】