ワールドカップ(W杯)初出場を目指す若手選手の「こだわり」に迫るシリーズ第3回は、フッカー坂手淳史(25=パナソニック)。フッカー歴は帝京大入学からと浅く、180センチ、102キロのサイズも強豪国と比べると小柄。それでもプロの道を選び、試合で最高のパフォーマンスを発揮するために自己管理には徹底してこだわっている。

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京都成章高ではNO8としてチームの中心であり、高校日本代表にも選ばれた坂手は、帝京大入学前に同大の岩出雅之監督に直訴した。「大学からはフッカーがしたいです」。中学から競技を始め、ロックやNO8など6年間務めてきた男の決断。バックロー(フランカーやNO8)での活躍が期待されていたが、岩出監督から「やってみよう」と快諾してもらった。

当時は180センチ、98キロ。群を抜いて体が大きいわけではなかった。だから「身長が小さいというのもあって、自分として生き残っていくところを見つけた時にNO8よりもフッカーの可能性がある」と考えた。そして現在はパナソニックとプロ契約するなど、ラグビーに懸ける思いが人一倍強い。だからこそ、大学入学前に将来を見据えてポジション転向に踏み切った。フッカーはスクラムで第1列の中央。ラインアウトを含むセットプレーの重要性を説く一方で、体のケアへの思いも人一倍強かった。

朝起きるとまず、首を2、3度左右に振る。そして時計回り、反時計回りに首を回す。その後、腰や肩などを回して関節の状態をチェック。「ポジション柄、首とか腰に負担がかかってくる。痛んでいるとパフォーマンスにも影響するので」。約半年前からは寝具メーカー「東京西川」の特注の枕を使用。少し柔らかめで、真ん中にくぼみがあり、両サイドに厚みがある仕様で、遠征時の必需品になっている。

プロになってからは、3種類のサプリメントを摂取している。骨を強くし免疫機能を促進する「ビタミンD」、約10種類のビタミンを同時に取れる「マルチビタミン」、血管年齢を若く保つ「EPA」を毎日、朝と夜に分けて摂取。食事も朝、昼、夜に加えて練習の前後に補食をして体重を管理。ベスト体重を「103キロ」に設定し、105キロになると「動きが遅くなる。鈍った感じが出る」と敏感だ。体重計に毎日乗り、細かく管理。ただひたすらに体を大きくするだけではなく、ラグビーで使える体にするために日々自分の体と向き合う。

大学卒業後にプロの道を選ぶことにためらいはなかった。むしろ「プロとして結果を残さないといけない。だけど何が結果なのかは分からないし、答えがないものをたくさん見つけないといけない」と覚悟ができた。幸い、これまで大きなケガを経験したことがない。だからこそ「大けがをして明日の練習で僕のラグビー人生が終わってしまうかもしれない」と常に危機感を持ち、自己管理にこだわりを持つ。体の状態を極限にまで高めてから、W杯のフィールドに立つ。【佐々木隆史】

日本代表フッカー坂手淳史
日本代表フッカー坂手淳史