南アフリカは、本来のできではなかった。ウェールズの22メートルラインを越えてからノックオンなどミスを連発。徹底してキックを使ったが、ほとんど再獲得できなかった。今大会100パーセントの成功率を誇ったラインアウトも初めて失敗した。波に乗れないまま相手に粘られ、接戦になった。
最後の最後に突き放せたのは、前半から強みのフィジカルで勝負を続けていたから。それがボディーブローとなり、相手を消耗させた。リザーブ選手のレベル差もあった。南アは後から出てくる選手がトップレベルだったから、終盤にスクラムで優位に立てた。
決勝トーナメントは負ければ終わり。ボーナスポイントのためトライを狙うこともなく、相手を1点でも上回ることだけを考える。W杯らしい、ひりひりするような点の取り合いは見応えがある。南アのできがいまひとつだったとはいえ、粘り強く接戦に持ち込んだウェールズはさすが。「ザ・テストマッチ」といえる内容の濃い試合だった。(前サントリー監督)