<高校ラグビー:桐蔭学園21-10大阪朝鮮高>◇準決勝◇5日◇花園

 昨年と同じ対戦となったAシード同士の戦いは、昨年準優勝の桐蔭学園(神奈川第2)が大阪朝鮮高(大阪第1)を破り、2年連続で決勝進出を果たした。後半26分にFB松島幸太朗(3年)が自陣ゴール前から約100メートルの独走トライを決めて、勝負を決めた。昨年覇者の東福岡(福岡第1)は、Bシードの関西学院(兵庫)に42-7で快勝。8日の決勝は、2年連続で同じ組み合わせとなった。

 後半26分、松島が風になった。1トライ、ゴールで逆転される16-10の場面。自陣ゴール前で相手がこぼしたボールが転がった。左サイドで拾った松島が加速、ハーフウエーラインをすぎて相手タックルを振り切る。残り20メートルで反対側から飛び込んできた選手を置き去りにすると、内に切れ込んでトライ。ゴールラインからゴールライン、100メートルの独走トライが勝負を決定付けた。「決まった瞬間はホッとした。あの時間帯でトライできたのが大きかった。今までで一番長いトライ。気持ち良かった」と笑顔を見せた。

 50メートル6秒1のスピードとあたり負けしない強さ。その強さは、昨夏の酷暑の中での地道なトレーニングで培われた。昨年5月のワールドユースの後、左手親指を手術。それから夏合宿までの3カ月間、ボールを持たずに基礎体力づくりに専念した。藤原監督は「ひざも悪かったから、思い切ってケアさせた。前はスピードだけだったのが、強さも見せてきた」と言う。

 強くなったことで、攻撃だけでなく防御でも体を張れるようになった。後半途中には、敵陣での味方パスをインターセプトされ独走を許しかけたが、圧倒的スピードで追いつき、危機を脱した。

 「トライを取るよりも、タックルで低く入ることを心掛けている。FWが頑張ってくれたから、落ち着いてディフェンスできた」。体の手入れに対する意識も向上。レモンの60倍のビタミンCを含むアマゾン原産の果物カムカムのドリンクを飲んで、疲労回復に努める。松島は「厳しい練習を積んできたから、今花園で楽しんでラグビーをやれる」と自信を見せている。

 決勝の相手は、昨年と同じ東福岡。高校ジャパンで一緒にプレーしたCTB布巻を中心に連覇を狙っている。松島にとって、1年がかりのリベンジの夢がかなうところまできた。「布巻をフリーにさせるのが一番怖い。しっかりマークして、今日以上のタックルをしたい」と闘志を見せる。卒業後に南アフリカの強豪シャークス入りする松島にとって、決勝が日本での当面のラストゲーム。リベンジを果たして有終の美を飾るつもりだ。【小谷野俊哉】