<高校ラグビー:桐蔭学園31-31東福岡>◇決勝◇8日◇花園

 桐蔭学園(神奈川第2)が「1年間の成長」を見せつけて、初優勝を飾った。2年連続の同カード決勝で、昨季完敗した東福岡(福岡第1)を開始から圧倒し、24-10で折り返した。終了間際に追いつかれ31-31で引き分け両校優勝となったが、左手首骨折を押してプレーしたSO小倉順平主将(3年)を軸に、初の高校日本一の座に就いた。東福岡は2大会連続3度目の優勝。両校優勝は昭和天皇崩御で決勝中止となった88年度以来で史上4度目。引き分けでの両校優勝は47年度の秋田工-函館市中(6-6)以来63年ぶり。桐蔭学園の優勝は東日本勢としては東京・国学院久我山以来13大会ぶり、神奈川県勢では相模台工(現神奈川総合産)以来16大会ぶり。

 桐蔭学園の小倉の心境は複雑だった。「終わった瞬間は『どっちが優勝なの』って感じでした。優勝はうれしい。でも、1点でも差をつけて勝ちたかった」。試合終了30秒前から、トライとゴールを奪われて7点差を追いつかれた。初優勝は果たしたが、昨季の雪辱はあと1歩で逃した。

 開始からスピードで東福岡の守備をかく乱した。0-5の前半6分、ハーフライン付近で相手の落としたボールを拾ったFB松島が50メートルを独走。同点トライを挙げた。「相手がミスすると思っていた。ただ走ることだけを考えた」。同14分には小倉の突破から、WTB竹中が勝ち越しトライ。後半1分には再び竹中が今大会11個目のトライを決め、31-10と21点差まで広げた。

 前回の決勝で東福岡に5-31で完敗した。昨年4月の選抜大会でも前半リードしながら後半に大量失点して逆転負けした。リベンジを誓い、夏以降は徹底したスタミナづくりに取り組んだ。「昨年、負けてから打倒東福岡のために走り込んできた。FW勝負じゃ勝てないのでスピードで勝つしかないと思っていた」と竹中は振り返った。

 だが、後半から得意の「押し相撲」に徹した東福岡のFWに圧倒された。7、24、そして29分にトライを奪われた。「後半は押し込まれた。相手はバテて、走れなくなると思ったんですが」(小倉)。ただ、引き分けに終わったが、選抜大会のような逆転は許さなかった。それが成長の証しでもあった。

 小倉は12月の練習試合で骨折した左手首をテーピングして強行出場。前半29分にトライを挙げるなど、最後まで気迫でチームを引っ張り続けた。「来年は後輩たちが東福岡を倒して優勝してくれるでしょう」。昨年6月にがんの手術をしていた藤原監督は「体はもう大丈夫。みんなで初優勝という“歴史を創造”してくれた」と笑顔を見せていた。【小谷野俊哉】