<水泳世界選手権>◇最終日◇4日◇バルセロナ◇男子400メートル個人メドレー決勝
94年世代に新ヒーローが誕生した。男子400メートル個人メドレーで瀬戸大也(19=JSS毛呂山)が4分8秒69の自己ベストで金メダルに輝いた。ラスト50メートルで失速した同学年の萩野公介(18)を抜くと、そのままトップでゴールした。この種目の世界大会金メダルは日本人初の快挙となった。二刀流に挑戦している日本ハム大谷翔平投手らと同じ94年生まれ。スポーツ界の黄金世代からまた逸材が現れた。
水泳を始めた5歳のとき「五輪で金メダルを取る」と宣言した。400メートル個人メドレーで男女通じて初の金メダルを獲得した瀬戸は子供のころから世界で戦うことを夢見ていた。五輪金5個のイアン・ソープの大ファン。8歳のときは横浜で開かれたパンパシフィック選手権を観戦し、ソープ、フェルプスらの写真を撮った。
物心ついたときには、イチローらが米大リーグで活躍していた。世界との壁が低い世代で、海外で物おじしない。ジュニア時代から海外遠征でも優勝を重ねた。「大人になっても戦えるイメージがわいた」。同じ94年生まれの萩野とは「2人で五輪の表彰台に立つ」が合言葉になった。
同じ価値観を持つ萩野の存在は大きい。小学3年のジュニアオリンピック(JO)から一緒のレースに出たが連戦連敗。中学2年のJOで初めて勝つと、それからは競り合うようになった。だが、昨年4月のロンドン五輪予選会前にインフルエンザを患い、強行出場も落選。一方で萩野は出場権を勝ち取り、本番では銅メダルを獲得した。
人生最大の挫折だったが、萩野のメダル獲得をテレビでみたとき、心を入れ替えた。「くさってる場合じゃない」。五輪後の9月の岐阜国体では、萩野に圧勝。その後のW杯6試合では、個人メドレー、バタフライ、平泳ぎ、自由形で計22度も表彰台に立った。今年は4月の日本選手権5冠を達成した萩野に再び先行を許すが、焦りはなかった。
今大会も7種目に挑戦し、銀メダル2個を取った萩野に話題は集中。「公介が目立って悔しくて。オレも絶対にやってやると、最後一発逆転を狙った」。決勝では隣コースの萩野をマーク。ラスト50メートルで失速したライバルをとらえると、がむしゃらに腕をかき、金メダルを引き寄せた。
「ちょっとは公介に追いついたかな。一番近いライバルが世界のトップ。これからも2人で世界のトップ争いができるように頑張る」。3年後のリオデジャネイロ五輪で萩野と一緒に表彰台に立つことが目標。休む間もなく、この日はバルセロナからW杯転戦のためオランダに出発した。世界選手権の金メダルは通過点にすぎない。【田口潤】
◆瀬戸大也(せと・だいや)1994年(平6)5月24日、埼玉・入間郡生まれ。5歳の時にJSS毛呂山で水泳を始め、個人メドレー、平泳ぎ、バタフライなどで活躍。高校総体では3年連続で個人メドレー2冠を達成。埼玉栄高から今年早大へ進学。家族は両親と妹。174センチ、70キロ。