メジャーリーグの取材で、9月下旬から米ロサンゼルスに来ている。今後、日本から大谷翔平投手、山本由伸投手らが所属するドジャース戦を見に行きたいと考えている人も多いだろう。恥を忍んで失敗を語るので、同じ轍(てつ)を踏まぬよう参考にしてほしい。
まず、ロサンゼルス国際空港(通称LAX)でつまずいた。サンフランシスコからユナイテッド航空を乗り継ぎ、到着したのは「ターミナル7」。成田空港は第1~3ターミナルまでなので、LAXの巨大さが分かるだろう。
勤務する会社から「とにかく経費をかけないこと」を命じられていた。そのため、ロサンゼルス直航便ではなく、サンフランシスコの経由便を使った。安い宿を予約したのは、イーグルロックという、ドジャースタジアムから北へ約11キロにある小さな町のモーテルだ。同球場はダウンタウンより北にあるのだが、市街地のホテルは高いので、逆方面を選んだ。
移動費用を安くあげるため、空港からダウンタウンまではシャトルバス(名称はフライ・アウェイ)を使うことにした。そこからウーバーを使用して、イーグルロックまで移動する算段だ。午後3時7分、シャトルバス乗り場に到着する。7月にロスを訪れていた同僚の記者から、シャトルバスに乗るにはアプリのダウンロードが必要だと言われていた。空港でダウンロードしようとしたが、うまくいかない。だが、どうやらクレジットカードのタッチ決済があれば利用できると看板に書かれていた。
空港からのシャトルバスは、ダウンタウンにある「ユニオン駅行き」と「バンナイ行き」の2方面に別れている。3時10分にユニオン駅行きが来るはずだが、来ない。柱の案内を読むと、時刻表は「ターミナル1」の発車時刻だった。しばらくすると、ターミナル7に来たのだが、なぜか通過した。理由は不明だったが、30分後には次のバスが来るはずなので、しばらく待った。その間、バンナイ行きは来た。だが、別方面に乗るわけにはいかない。30分後、またもバスが通過した。だが、次のバンナイ行きは到着した。さすがに、何かおかしいと気付く。
また30分後、とうとうユニオン駅行きのバスが到着した。だが、運転手が「満員なので4人しか乗れない」と言う。ようやく合点がいった。バスは「ターミナル1」から数字順に「ターミナル7」まで回る。ゆえに、ターミナル7までに満員になる確率が高い。ターミナル間には連絡バスが走っているので、ターミナル1に行ってから乗ればよかったのだ。
排ガスの中で1時間30分も待って、経由もあって睡眠しておらず、重い荷物もあって体力は限界だ。ウーバーでの移動に切り替えた。ライドシェア乗り場までの移動バスに乗る。こちらも満員だったが、20分ほど待って、どうにか乗車に成功。乗り場まで移動し、人生初のウーバーを呼んで、宿のあるイーグルロックまでの移動が完了した。105ドル(約1万5200円)+チップがかかったが、ダウンしたら、それこそ今後の取材がおじゃんになる。さすがに会社も許してくれるだろう。
そのころ、マイアミでは大谷が3本の本塁打を打ったことを知る。一方で私は、3本もバスに通過された。宿に到着後、歴史的な「50-50」達成で、あわてて仕事に取りかかる。もう28時間ぐらい寝ていないが、仕方ない。
翌日、昼に「インアンドアウトアウトバーガー」に立ち寄ってから、ドジャースタジアムにウーバーで向かう。同店は数年前、ヤクルト山田哲人内野手が「おいしい」と語っていたので、気になっていた。店は大変な活況で、確かに納得の味と値段(ダブルダブルで5・9ドル=約860円)だった。なんでも高い米国では、破格の安さと言えるかも。ウーバーでの球場への移動は、32ドル(約4600円)+チップだった。
ドジャースタジアムに来たのは大学生だった97年以来、27年ぶりだ。取材パスを受け取り、入場。いつか野球記者になって戻ってくるんだ、との念願がかなった。ロッカー室で山本投手と園田芳大通訳へのあいさつを済ませ、取材に入った。試合前にロバーツ監督、グラスノー投手、新人2人が会見。さらに山本はブルペン入りし、大谷も外野でキャッチボール。カーショー、ナックらが、大谷の「50-50達成記念Tシャツ」を着て練習している。試合前から大量に記事を書いた。
記者席の裏にある関係者食堂で急いで夕食をとると、すぐに試合開始を迎えた。試合は大谷が3安打1本塁打1盗塁で「52-52」へと記録を更新。本塁打を打った時の打球音は、聞いたことがないような金属のような音だった。また、前打者エドマンが二塁盗塁を仕掛けた場面では、好スタートを切ったのに反応して、すかさずウェーティングに切り替えたように見えた。この2点は、実際に球場にいないと感じられない。身体能力と野球脳の素晴らしさ、両方がうかがえた。
渡米後2つめの大問題が起きたのは、帰路のことだった。続く。【斎藤直樹】
(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)