すっかりドジャースの大黒柱としてチームメートからも、ファンからも愛される大谷翔平。今回、MLB初取材の「ケンケン」こと日刊スポーツ横山健太カメラマンが写真とともにフレッシュな視点でレポートします。
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MLB大谷取材で私が米国に来てから2カ月以上が過ぎた。毎日のようにドジャースの撮影をしていると選手たちはもちろんのこと、スタッフの人達とも顔を合わせる機会が多く、個性豊かでいろいろな人たちがいることを知った。その中でも一番気になったスタッフがトラビス・スミス・コーチだ。スミス・コーチはストレングス&コンディショニング担当としてドジャースで12年目になるベテランコーチで主に選手の体調管理などを担当している。大谷とも仲が良く、試合中のベンチでは隣で試合を見ている彼の姿をよく目にしている。
そんなスミス・コーチに興味をもったきっかけは主務であるコンディショニング面ではなく試合前のベンチでの振る舞いだった。試合が始まる前に選手たちがベンチへ集まり出すとスミス・コーチは大声を出してチームを鼓舞し、選手と多種多様なパフォーマンスをする。それも同じことはせずに1人1人違ったやり方で。その光景を何度も見ているが覚えるのも大変だろうし、バラエティーに富んでいるので毎回感心させられていた。間違えたりしないのか、どういった理由で個々のパフォーマンスを作り出しているのか気になったので記者を通して聞いてみた。
スミス・コーチ「それぞれの選手に、個性がある。例えば、フリーマンは毎日、ディノ(三塁コーチ)とルーティンをやっている。その上で、僕は彼と握手をすることにしたんだ。クラブハウスやダグアウトで明るく、みんなをリラックスさせたくてね。僕はエナジーガイ。試合が始まってしまうとなかなかできないけど、試合が始まる前に選手にエネルギーを与えたいんだ。ウエイトルームで話したり、準備の仕方だったり、とにかく選手たちを知ろうと思ってね。例えば、ケビン・キアマイヤーはよく知らなかったけど、何年も彼のプレーを見てきて、彼は守備で素晴らしいパフォーマンスをしていた。だから、握手もダイビングするようにやっているよ。それが僕のルーティン。ボールをキャッチするように、握手している」。
ちなみに大谷とも試合前にルーティンを行っているが、フュージョンや水筒での乾杯、今は体のぶつけ合いをしている。バスケットボールのスクリーンアウトみたいなことをやっているとは思っていたがスミス・コーチにそれを始めた理由を聞いてみると、
「バスケットボールをやってるよ。彼は、好きなアスリートは? という質問で『My Wife(妻だ)』って言ったでしょ。そう、だから、彼は僕をガードするようなことをやっているよ」。何げないインタビューの内容を大谷との試合前のルーティンに取り入れてしまうスミス・コーチはすごい。
そして彼だけでなく、多くのコーチやスタッフがいろいろな状況、現場でチームのことを考え、プロフェッショナルに支えているからこそ今の強いドジャースがある。【横山健太】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ケンケンのWEEKLY SHO!Time!!」)