特別連載「ザ・真相-AKB48選抜総選挙」の第5回は、13年のHKT48指原莉乃(当時20)の初戴冠についてです。前年4位だった総選挙の直後に暴露された恋愛スキャンダルをものともせずに頂点に立ち、従来のアイドル像を超越しました。なぜ、こんな大逆転劇を起こせたのか? そこには指原にしかないオンリーワンの魅力と、スキャンダルを境にファン層が入れ替わった現実がありました。
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指原の初戴冠は、総選挙の歴史の中で最大の衝撃だった。当時は時には自らをブス扱いもしたバラエティー(お笑い系)アイドルで、かつ恋愛禁止ルールの中で致命的なスキャンダルも報じられただけに、246人のグループの頂点に立つとは、ほとんどの人がイメージできなかった。
だが、指原ファンにとっては根拠のある結果だった。ファン歴10年のこうずさんは「初期の莉乃ちゃんファンは彼女に恋する“ガチ恋系”の人ばかりでした」と振り返る。ファンの数が少ないと握手会でアイドルに認知してもらいやすく、自然とこの種のファンが集まってくる。
しかし、AKBのブレーク直後から秋元康氏に見初められて、ヘタレキャラとしてテレビ番組で頭角を現すと、握手会には行かずにテレビやSNSを通して応援するファンが増えてきた。こうずさんは「今までのアイドルでは考えられない彼女の個性的な活動は、話題に事欠かずにおもしろかったんです」。指原が従来のかわいいだけのアイドル像を壊すキャラクターになると、ファン層も拡大していったのだ。
こうずさんは「あのスキャンダルがきっかけで、ガチ恋系の人たちは去って、娘や親戚の子を見守る感覚のおじさんたちへと、ファン層がガラリと入れ替わりました。そもそも彼女に恋をしたファンではないので、スキャンダルのショックもなく、むしろ『逆境に追い込まれたさっしーを我々で助けよう』となっていった」と解説した。
もちろん、指原本人もスキャンダルの罰で地方の博多へ「左遷」と陰口を言われたHKT48への移籍をバネにした。12年総選挙後からの1年間も、(1)アイドルフェス「ゆび祭り」のプロデュース(2)映画初主演(3)移籍先のHKT48の劇場支配人就任など、独自路線で常に話題を振りまき続けた。
冷静に分析すると、なるべくしてなった、一大サプライズな結果だったのだ。【瀬津真也】