世界中で一大ブームを巻き起こした米人気テレビシリーズ「SEX AND THE CITY(SATC)」。2004年まで放送された同シリーズをもとに2作品が映画化され、主人公のキャリーが紆余(うよ)曲折を経てミスター・ビッグと結婚し、めでたしめでたし。おとぎ話のようなハッピーエンディングに、満足したファンも多いはずだ。
実際は、2人が別れるシナリオも同時に検討された末、最終的にこのバージョンになったともいわれており、当時はこの結末についてさまざまな意見が飛び交った。クリエーターで製作総指揮者の一人でもあるダレン・スター氏が最近、アマゾン発行の電子書籍「The Kindle Singles」のインタビューで、「番組は、その本当のテーマをみごとに裏切った。そのテーマとは、”女性は究極的に、結婚からは幸せを見いださない”ということだ」と本音を漏らした。同氏は、番組のシーズン6のフィナーレで、キャリーがついにビッグと結ばれたことを指しているようだ。
同氏はさらに、「番組は当初、ロマンチック・コメディー路線から外れていたし、そこが女性たちを夢中にさせた。しかし、最後はごく普通のロマンチック・コメディーになってしまった。全部のエピソードの脚本を自分で書かない限り、自分が望む結末を得ることはできない」と、今でも結末に不満を抱いているようだ。映画の1作目(2008年全米公開)では、キャリーとビッグが挙式へと至るまで、2作目(2010年全米公開)では、結婚から2年後、価値観の違いから、結婚生活に不満を持ち始める2人の様子が描かれている。甘いだけではないにしろ、ロマンチック・コメディー路線を抜け切れているとは言えない筋書きだ。
スター氏が言っているように、同シリーズは4人の女性たちの恋愛や生き方をリアルに描いたのが人気を呼んだ秘密。ニューヨークらしいエッジが効いた展開や、時にシニカルなところも魅力だった。”女性は究極的に、結婚からは幸せを見いださない”というスター氏の洞察は奥が深く、鋭い。賛否両論はあるだろうが、この言葉はとくにニューヨークのキャリアウーマンたちにあてはまるような気がする。そんな女性たちに焦点を当て、番組を作っていたというスター氏の気持ちはよくわかるし、シリーズの究極の目的はそこにあったのだと改めて感じさせられる彼の言葉だった。
ニューヨークを舞台に、ニューヨーク女性のライフスタイルをリアルに描くなら、ぜひ掘り下げてほしいテーマだが、特に映画を作るとなると、大衆受けするロマコメ路線に陥るのも、ありがちなパターンではある。当初は、2作目が興行的に思ったほどの成功を収めなかったことなどから、制作側が3作目に難色を示していたが、最近になって、3作目にゴーサインが出たとのうわさがちらほら飛び交っている。
さらに、米国では現在もテレビで再放送されている同シリーズだが、また1つ、「SATC」ファンでなくとも驚くような事実が明らかになった。ミランダ役のシンシア・ニクソンが最近のインタビューで、同シリーズに登場するセックスにまつわる笑えるエピソードは全部、実際にあった話だと明かしたのだ。「ルールがあって、脚本家たちは自分自身や、自分の知り合いに本当に起こったこと以外は書けなかった。だから、奇妙でセクシュアルな話の数々は、全部本当に起こったことよ」と語っており、ファンにとってはDVDや再放送を見る時の楽しみがまた一つ増えたようだ。
【鹿目直子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「SPY!CELEBRITY」)