2日に放送されたフジテレビ系連続ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」(木曜午後10時)4話「右では殴らない」で、主人公、姫川玲子警部補(二階堂ふみ)が重要参考人の女子高生に突き付けた言葉です。竹内結子さんの当たり役だった前シリーズから6年。二階堂版もこういうせりふがダークにキマってかっこよく、毎週ドはまりして見ています。

28歳で班持ちの主任警部補となった姫川と、姫川班のチーム捜査。4話の「右では殴らない」は、姫川と売春女子高生の取調室での対決を描き、原作、前作ともに人気の高いエピソードです。行動があまりにも軽いJKと、あまりにもむごい姫川の高校時代の記憶を交錯させ、彼女が警察官になった理由が明かされた回でした。自分のために殉職した女性刑事への恩と、自らも警察に身を投じたプライドが手に取るように分かり、「警察をなめないで」の座った目に納得がいくのです。

ショートカットと、禁欲的な黒スーツ。女性的な部分をそぎ落とした二階堂さんの姫川像は、赤いバーキンを持っていた竹内版よりハードさ高めで個人的には好み。「社会社会って、ウチら関係なくないですか」という未成年の主張を畳みかけるように一刀両断していくくだりも、滑舌がいいせいか、知性と気迫を感じます。

胸ぐらつかんで壁に追い込み、少女売春と風俗業の違いを突き付けてやり、麻薬の恐ろしさを容赦なく浴びせ「立派な人殺しよ」「どれだけ悪質で重い罪か、ようく考えなさい!」。振り上げた右手の拳を、相手の顔面かすめて思い切り壁へ。竹内版にもあったこの名シーンを演じてみたい女優は多いのでは。この後、見下ろす角度で冒頭の「警察をなめないで」。壁のへこんだ跡から、姫川の怒りと拳の痛みが伝わってくるような迫力でした。

サブタイトルの「右では殴らない」は、ブチギレて利き手を負傷してしまった後悔。竹内版では、痛みで始末書の文字がとんでもないことになり「左にしておけばよかった」みたいな、クスッとするオチでした。二階堂版は、亡き女性刑事が好きだったアイスのスプーンが持てない、というラストシーンに。つかず離れずの距離感で姫川を支える部下の菊田(亀梨和也)がさりげなくカップのフタを取り、スプーンを袋から出して左手へ「どうぞ」。女上司と、寡黙な年上部下のほのぼのとしたシーンで、亀梨の菊田にも愛着がわきます。

国家権力である警察は、ドラマではヒール役で描かれることが多いので、リスペクトを前提に仕事ぶりをぐいぐい描くこの作品は逆に新鮮です。特に最近は、特命係、倉庫番、なんでも課など、日陰部署の活躍を描くのが警察ものの必勝パターン。捜査1課はエリート臭まき散らす無能として描かれがちなので、班同士のむき出しの手柄争いや、序列ありきのチームワークなど、1課ならではの王道捜査にもわくわくします。

リメークものの常で視聴率的には苦戦していますが、主演をちゃんとかっこよく描けているので、個人的にはこれで全然OK。「ブルーマーダー」など、初めて映像化されるエピソードも今後あるとのことですし、姫川班の一員になった気分で最後まで楽しみたいと思います。

【梅田恵子】(B面★梅ちゃんねる/ニッカンスポーツ・コム芸能記者コラム)