「第18回日刊スポーツ・ドラマグランプリ」助演女優賞は、フジテレビ系「銭の戦争」の木村文乃(27)が初受賞した。本意ではなく婚約が破棄された主人公(草なぎ剛)を胸の奥で愛し続ける女性、青池梢を、凜(りん)としたたたずまいで演じた。
社長令嬢のキャリアウーマンとして気品に満ち冷静に振る舞いながら、胸には、けなげな愛を秘め続けるという難役だった。大島優子演じたヒロイン未央の恋敵役を、ただのライバルで終わらせなかった。「台本では悪の要素が強かったので(制作側は)もっと意地悪な役にしたかったのかもしれません。ただ、それだと(主人公の)富男さんを好きな理由が薄くなると思って、何があっても彼をずっと好きで仕方のない女性にしようと決めていました」。この判断を貫き通した演技が、視聴者の心に響いた。「梢役をいただいて、初めてお芝居に貪欲になった感覚がありました。私自身も最後まで梢を愛してあげたかった」。
16歳でヒロインとして華やかに映画デビューを飾ったが、鳴かず飛ばずの数年も経験した苦労人。元来、芝居への情熱は熱いが、今回は「収録前からスタッフさんに(相談の)時間も取らせてしまっていました」と、さらに入念だった。
草なぎと2人のシーンは、互いが納得いくまで何度も撮り続けた。その結果「最後まで富男さんからの愛は感じられた。それでもヨリは戻してくれない。ライバル未央にではなく、その先の何をしてものれんに腕押しの富男さんにヤキモチを焼いていたんです」。梢の恋心を研究し尽くしたゆえの、名演技だった。
女優として、また1つ貴重な経験を積んだ今、TBS系連続ドラマ「マザー・ゲーム~彼女たちの階級~」(火曜午後10時)に初主演中だ。苦戦することも多いが「うれしい賞をいただけたので、なおさら恥じない結果にしなきゃいけないですね」と、自らにハッパをかける。収録現場でも、何度もスタッフと話し込む姿があった。より魅力的な役、より魅力的な作品づくりへ-。木村の真剣勝負は続く。【瀬津真也】
◆木村文乃(きむら・ふみの)1987年(昭62)10月19日、東京都生まれ。04年映画「アダン」ヒロインオーディション合格でデビュー。06年映画「風のダドゥ」初主演。11年NTTドコモCMなどで再注目され、12年NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」に出演。23日に「イニシエーション・ラブ」、9月に「ピース オブ ケイク」の映画2作が公開予定。164センチ。血液型AB。
◆「銭の戦争」 東大卒で美人婚約者青池梢(木村文乃)もいる証券マン白石富男(草なぎ剛)は、借金を残して自殺した父の連帯保証人として全てを失う。やがて、高校時代の恩師とその娘未央(大島優子)の家に居候をしながら、自分をどん底に追い込んだ金貸し業になり「金でなくしたもの全てを金で取り戻す」と立ち上がる。梢は、祖母の跡を継ぎ大企業社長となり、富男と敵対関係になる。
◆ドラマグランプリ 3月20日から26日まで日刊スポーツのホームページ「ニッカンスポーツ・コム」やスマートフォンサイト「ニッカンエンタメ・プレミアム」、携帯サイト「ニッカン芸能!」と宅配読者の携帯会員サイト「ニッカンポイントクラブ」などで昨年4月から今年3月までに放送された連続ドラマを対象に「主演女優賞」「主演男優賞」「助演女優賞」「助演男優賞」「作品賞」を選ぶアンケートを実施。各期(4、7、10、1月)ごとのベスト5、各部門計20人(作品)を候補とした。
投票総数は2394票。男性が715票、女性が1679票。10代以下が37票、20代118票、30代257票、40代875票、50代812票、60代以上が295票だった。
※なぎは弓ヘンに前の旧字の下に刀