盆踊り会場から日本代表にエールを送る佐藤陸奥雄さん(左)、有子さん夫妻
盆踊り会場から日本代表にエールを送る佐藤陸奥雄さん(左)、有子さん夫妻

<三須記者がリオで見る:カーニバルの光と影>

 【マナウス6日(日本時間7日)=三須一紀】第1戦を落としたリオデジャネイロ五輪サッカー日本代表が今日7日(同8日)、予選リーグ第2戦(対コロンビア)を迎える。1歩たりとも引けない日本代表を奮い立たせるべく、現地マナウスの日系社会は伝統の「盆踊り大会」で一致団結した。結果次第では予選敗退が決まる背水の陣に向け、親日の地はブラジル人もともに、青き勇者たちにエールを送った。

 アマゾンの森に日本の原風景があった。紅白の幕で覆われた中央のやぐらから、放射線状に伸びる無数のちょうちん。日本でも減っている伝統的な盆踊りが地球の真裏で、1960年頃から行われてきたという。

 日系人、日本人駐在員だけではない。ブラジル人も浴衣を着て、やぐらを回る。東京から約1万5900キロ離れた地で「東京音頭」の「よいよい」が響き、花火も上がった。

 西部アマゾン日伯協会の錦戸健会長(65)は「本当は日本の選手たちにも見てもらい『ニッポン』を感じてもらいたかったんだけどね」と語る。不安定な世界情勢を考慮し、国際オリンピック委員会(IOC)などが選手団との接触を厳しく制限しているという。

 ブラジル北西部のアマゾン川流域に開けたマナウスは、人口190万人の工業都市。錦戸さんによると日系移民関係者は約2500人。日系企業は約40社あり日本人駐在員は約6000人いるという。

 日本人が西部アマゾンに移住して今年で87年。錦戸さんは1958年に入植した当初、家は丸太を組み立て、屋根はヤシの葉だった。長い歴史の中、「日本代表」が、移民の歴史が刻まれたこの地で世界大会を戦うのは初めて。選手団には会えないが、日系社会が団結して、手倉森ジャパンを盛り上げている。


 前日5日にはカツカレーとぼた餅を日本チームに差し入れた。オリジナルの応援ユニホームも250枚作製。また、日伯協会やパイオニア社などが7400枚の青いゴミ袋を準備。錦戸さんは「選手と直接会えないのなら、せめて日本らしい応援を見せてパワーをもらって」と考案した。

 ヒントは14年サッカーW杯ブラジル大会の日本人サポーター。青いゴミ袋で応援し、試合後はその袋でゴミを清掃して帰ると、世界から称賛を浴びた経緯を参考にした。

 盆踊りが行われた入植地の佐藤陸奥雄会長(71)は第1戦を観戦した感想を「日本代表が戦う姿を見られて感慨深い。ブラジル国籍だけど、気持ちは日本人。私も70代だけどサッカーをやっている。ニッポン、次は絶対に勝ってください」とエール。親日社会のマナウスは全力で、日本の勝利を願っていた。

 ◆マナウス 人口約190万人。日本との時差は13時間。日本企業の工場も数多く進出している。ホンダ、ヤマハ、パナソニック、ソニーなどがある。67年、ブラジル政府がアマゾン地域開発のために「マナウスフリーゾーン」を設置。税制優遇などを行い工場を誘致した。