女子52キロ級で金メダルに輝き、記念撮影するケルメンディ(撮影・松本俊)
女子52キロ級で金メダルに輝き、記念撮影するケルメンディ(撮影・松本俊)

 小国でも、代表が10人未満でも、輝きを放つ選手たちが五輪の舞台を彩っている。柔道女子52キロ級で金メダルを獲得したマイリンダ・ケルメンディ(25=コソボ)もその1人だ。コソボは国際政治の壁に翻弄(ほんろう)され、五輪参加が阻まれてきたが、今大会から国家としての参加が認められ、ケルメンディが祖国に五輪メダル1号をもたらした。祖国に希望を与える小国のアスリートに迫った。

 ケルメンディがコソボのの歴史に名を刻んだ。08年にセルビアから独立宣言し、14年に国際オリンピック委員会(IOC)に承認され、今大会から国家として五輪参加が可能になった。12年ロンドン五輪は隣国アルバニア代表として出場し9位。今回は念願の祖国代表として畳に立ち、頂点に立った。まだ国連加盟は阻まれているが、表彰式では国旗が掲げられ、国歌も流れた。「コソボのような小さな国でも金メダルを取れるということを証明できた。歴史的な瞬間になった」と涙を流した。

 旧ユーゴスラビア・セルビア共和国の自治州だったコソボで生まれ育った。90年代の独立紛争で、自宅をセルビア兵に踏み込まれたこともある。母親は命の危険を顧みず、食料調達のために外出し家族を支えた。「柔道で戦う気持ちは母からもらった」と振り返る。

 13年から2年連続で世界選手権を制したが、祖国の名を背負うことはできず、表彰式には国旗掲揚も国歌演奏もなかった。ケルメンディの元には他国から国籍変更のオファーも届いたが「コソボ代表」にこだわった。「この日のこの瞬間のために生きてきた。表彰台で国歌を聴き、国旗を見ることができたのは最高の幸せ」と感慨深げに語った。

 紛争や国際政治の壁にもめげず、祖国に光をともした。「コソボは小さな貧しい国。内戦で親を亡くした人や教科書を持たない子も多い。でも、誇りを持って自分にも大きなことができると信じてほしい」。五輪は米国など大国のトップアスリートだけのものではない。あらゆるものを背負って五輪の舞台に立つ小国の選手もいる。

 ◆各国・地域の代表選手数 史上最多の205カ国・地域、1万1000人超の選手が参加する今大会で、代表選手(個人参加を除く)が10人未満の国・地域は93で5人以下は47。最少はツバルの1人。最多は米国の562人で開催国のブラジルが480人で続く。日本は342人で7番目に多い。