既に1次ラウンドの1位通過が決まっている日本にとって、このドミニカ戦は結果以上に大事なことがある。ひとつはこれまで試合に起用していない選手の状態を確認すること。そしてもうひとつ大事なのは、やってはいけないプレーの確認作業だと思っている。そういう意味では、収穫のあった試合だった。

1点をリードされた3回表2死満塁だった。この場面で佐藤がレフトにはじき返し、三塁走者・森下が同点のホームイン。二塁走者の栗原も楽々、勝ち越しのホームを踏むと思った瞬間だった。一塁走者の紅林が三塁を狙ってタッチアウト。栗原のホームを踏むタイミングより、紅林の三塁タッチアウトが早かったため、ホームへの生還は認められなかった。

言うまでもなく、一番いけないのはホームの手前でスピードを緩めた栗原の走塁。当たり前だがホームへの走塁はオーバーランでアウトになることもない。スピードを緩めるのは完全な油断だった。

しかし、責任は栗原だけではない。三塁でタッチアウトになった紅林も、100%の確率でセーフになる確信がなければ走ってはいけない場面。三塁ベースコーチャーは二塁走者への指示を出すため、一塁走者は個人のジャッジメントプレー。これが無死や1死なら三塁でアウトになっても得点は認められるが、2死では得点にならない。基本的な状況判断のミスだった。

そして先にホームインしていた森下と、次打者でホームベース付近にいるはずの五十幡にも責任はある。紅林が三塁を狙った瞬間に「急いでスライディングをしろ」というジェスチャーをしなければいけなかった。そういう状況にもかかわらず、ホームに生還した森下は両手を挙げて「大丈夫」というジェスチャー。おそらく「ホームには投げてこないよ」というポーズだったのだろう。

確かに左翼手はホームに投げなかったが三塁に送球。この場合のジェスチャーはどこに送球するかではなく、一塁走者が三塁を狙っているか狙っていないかの判断でジェスチャーを送らなければいけない。それでも栗原はスピードを緩めてはいけないのだが、森下のジェスチャーを見てスピードを緩めてしまった可能性はある。

いくら負けてもいい試合とはいえ、試合展開でいえば大事な状況だった。1次ラウンド突破が決まっていただけに、明らかに油断があったという証拠だろう。しかし、スーパーラウンドを前にしたチームの「戒め」にはなる。このようなボーンヘッドをしないことをチームで確認すれば、大事な場面で同じミスの繰り返しは防げる。実力的に抜きんでている日本チーム。「凡事徹底」を貫ければ、高い確率で優勝できると思っている。(日刊スポーツ評論家)

日本対ドミニカ 1回表日本2死満塁、押し出し四球で生還した清宮(右)とタッチを交わす井端監督(撮影・横山健太)
日本対ドミニカ 1回表日本2死満塁、押し出し四球で生還した清宮(右)とタッチを交わす井端監督(撮影・横山健太)