ここ近年の国際大会を見ると、各国とも「日本戦は左投手」をぶつけてくる傾向が強い。ただでさえ、日本球界は他国と比べて左の好打者が多く、今試合のベンチ入りメンバーも左打者が9人で右打者が6人。米国は、そんな日本のメンバー構成を見て先発に左腕のヒルをぶつけてきた可能性は高い。そして日本のスタメンは、左打者を6人並べた打線だった。
一見、左対左で不利に見えるが、実際は違う。今シーズンの成績で日本の1番から9番までの選手で右腕より左腕の方が成績がいいのは桑原、小園、森下、源田、坂倉。右腕の方が成績がいいのは辰己、栗原、牧、佐野。この中で辰己は右腕の方が打率3割1分1厘と打っているとはいえ、左腕の打率も2割7分。左を苦手にしている左打者は栗原、佐野ぐらい。左打者のスタメンが多かったのも納得できる。
ただ、実際の数字と違ったのは左腕・ヒルの投球スタイル。身長は196センチで、一番厄介な球種は曲がりの大きなカーブだった。真っすぐの球速は140キロちょっととスピードはないが、長身から日本人投手にはいない角度から投げ下ろしてくる。カーブへのマークを強く意識すると、どうしても目線の位置が高くなり、高めのボールゾーンへの真っすぐにバットが止まらなくなる。
さらに体を開かずに投げてくるため、球速以上にスピードを感じたのだろう。タイミングが合って、バットの芯で捉えた打球は1本もなく、4イニングで1安打無得点。三振を見ても小園が141キロの高めの真っすぐ、桑原が高めのカットボールで直球系の球で空振り三振。源田、佐野は低めのカーブで、坂倉は外角のカーブで空振り三振。注文通りの三振だった。
長打力のない日本打線で怖いのは、この手の左腕を打てないとき。国際大会では球数制限があり、長いイニングを投げてくる可能性はほぼないが、その分「慣れる暇」もない。今試合は2番手でリリーフしたトンプソンはサイド気味の左腕で、この手のタイプは日本にいる。逆転に成功したが、球速の遅い左腕を打ちあぐんだあとに右の速球派がリリーフすると、打者の戸惑いが大きく、苦戦するケースがある。
ヒルのような左腕には、各自の打者が真っすぐかカーブに狙いを絞り、長打やホームラン狙いでいい。ヒルの年齢は44歳の大ベテランだが、今試合での球数は58球。決勝戦で対戦することになれば、短いイニングで投げてくる可能性はある。その時にどう対応できるか? そうした経験がチーム強化につながってくると思う。(日刊スポーツ評論家)