そら、しゃべるよ、そんなん。そんな感じだったかもしれない。今季限りでユニホームを脱いだ前指揮官・岡田彰布が「オーナー付顧問」に就任し、先月13日のCS敗退後、この日、初めて公の場に顔を出した。

岡田の監督就任から退任に至る経緯はもう多くの報道で知られていると思う。“阪神の権化”とも言うべき岡田が長い間、監督として復活しなかったのは、ズバリ、そのスタイルが理由だったと思っている。

ときに「歯に衣(きぬ)着せぬ」を通り越すような放言ぶりでタイガースを愛するがゆえに評論家、解説者として厳しい指摘をしてきた。当の阪神球団側からすれば、ハッキリ言って、面白くなかっただろう。

だが阪急サイドの意向で22年オフに「勝つこと」を目的に第2次政権が誕生した。2年契約で。はたして1年目の23年にリーグ優勝から日本一という結果が出る。2年目の今季は2位に終わり、CSも敗退したが、正直、もう1年ぐらいはあるかもという見方が多かった。しかし当初の契約通り、2年で満了ということで退任となったのである。

かつての阪神なら、ここでリリース…という流れでもおかしくなかったかもしれない。だが最近はOBに対するリスペクトも見せているし、なにより岡田が大きな功労者であるのは間違いないこと。それがあっさり退団ではよろしくないということでこの立場で残ることになったと言える。

反対に言えば、球団の人間なんだからあまり厳しい批判は避けてほしいという思いも、ひょっとしてあるかもしれない。岡田もそれを了承しての就任なのかな、と思っていた。

しかし岡田にそんな気はないようだ。新指揮官・藤川球児が秋季キャンプで紅白戦を行ったことに「意味ないとおもうよ、ハッキリ言うて」と一刀両断。思ったことは言うスタイルは不変のようだ。ズバリ「そういう制限があるのか?」と聞いたが「そんなん、ないない」と言い切った。

いいな、と思うのはフロントの姿勢である。球団社長・粟井一夫の談話だ。この種の懸念に「厳しい解説、評論は岡田さんの持ち味なので。存分に発揮していただいて」と言い切った。批判も歓迎ということだ。もちろん監督就任以前のような感じではないかもしれないが、まず「岡田節」は今後も聞けるし、阪神も了承しているということ。結構、面白いと思う。(敬称略)