まずはホッとしたという感じだろうか。
FA権を取得した坂本誠志郎の阪神残留である。FA権行使の締め切りとなった13日、球団事務所で残留すると、メディアの前で表明した。
なんと言えばいいのか分からないが、このオフ、なんだか阪神は落ち着かない。まず原口文仁のFA宣言に始まり、大山悠輔だ。いずれも他球団に移籍すると決まったわけではないが可能性はある。オフに球界が動くのは例年のことだが、最近は比較的、無風状態が多い阪神にしては話題が多い感じがする。
繰り返すが、そんな中でホッとしたというのはFAにおける1人のキーマンと思われていた坂本の残留が決まったことだ。この話題をめぐっては早々と2月の宜野座キャンプで少し話をした。続けて、このコラムを読んでいただいている読者は先刻ご承知だろうが、当時、彼とFAについて話したとき、こんなことを言っていた。
「ボクが(FAで)出たら阪神は痛いんですか? 別に痛くないでしょ。じゃあ、本当に痛いかどうか。いっちょやってみますか」。さらに「宣言したら巨人とか手が上がるかもしれんで」と続けると「それもおもしろいですね」と笑っていた。冗談ぽくではあったが雰囲気的に“残留ありき”ではないかと思っていた。
この日の会見で坂本は「悩んでいたのは事実」と認めたし、限られたプロ選手しか得られない権利だけに、いろいろ考えたのだろう。それは当然のことだし、何もおかしくない。その上で残留を選んだのだから、これはよかったと思う。
「阪神は最初から幹部候補生として坂本を獲得してるんですよ。ドラフトは野球の技術は当然、キャプテンシーというか性格も調査する。その上で、幹部候補生として」。2月にも書いたが坂本と同じ明大OBの球界関係者からそう聞いたこともあった。
岡田彰布の2シーズンが終わり、新指揮官・藤川球児の野球が始まる。共通するのは「投手を中心にした守りの野球」だろう。その意味で梅野隆太郎と、そして坂本の2人が阪神でプレーするのは、やはり大きいと思う。そして坂本も言うように兵庫出身、高校は大阪の履正社という坂本が「地元」のチームにこだわったという点も、うれしいのである。今季、ファーム行きも経験した坂本の新たな飛躍に期待したい。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)