ファン感謝デーにぎっしりと3万8500人。やっぱり人気の阪神やなあ…と思いながら晴天の甲子園で繰り広げられた出し物を眺めた。

選手もユニホーム姿とはいえ、シーズン中とは違う穏やかな表情。ファンも楽しそうだった。

FA宣言している原口文仁、大山悠輔を含め選手もほとんどが顔をそろえたが、主力で不在のメンバーがいた。才木浩人、森下翔太の2人。言うまでもなく、現在はプレミア12の先発投手、4番打者として真剣勝負を続けているからだ。

ここで思い出したのは、かつて指揮を執った知将・野村克也が話していたことだ。99年に阪神監督に就任したとき、野村はこんなことを言った。「阪神、阪神言うてもオールジャパンを組んだら入れるメンバーおらんやないか」-。

プロ12球団選抜で1チームを作ったとき、阪神からは誰も入れない。暗黒時代から抜け出そうともがいていた当時のチーム状況を振り返れば、誰も異論を唱えることはできなかった。それから四半世紀、現在の侍ジャパンに投打の主力が2人いる。メジャー組不在とはいえ、これは感慨深いことだろう。

「そうですね。野手で言えばウチからは以前、鳥谷敬(日刊スポーツ評論家)が入った印象が強いぐらいで。まあ、苦節25年という感じかもしれません。フロントも一生懸命です…と書いておいてください」

この日、雑談した球団幹部はそう話した。冗談ぽい様子だったが、ドラフト戦略を含め、しっかりチームづくりを進めてきた結果なのは間違いない。チーム成績も元監督・矢野燿大から今季で監督を退いた岡田彰布(オーナー付顧問)までの6年間で続けてAクラスである。「歴史はあるけれど伝統は…」と言われてきたチームも人気に中身が伴ってきたと言えるか。

「勝つことが最高のファンサービス」と言い切ったのはかつて中日で指揮を執った落合博満だ。今はやはり、それだけではない。普段からファンに好かれ、人気があり、そして試合に臨めば結果を出す。それがいいのは間違いないのである。

新指揮官・藤川球児は以前からファンに対する姿勢はよかった。キャンプでサインする光景もよく見たものだ。来年は90周年を迎えるタイガース。新たなユニホームで躍動するナインを早く見たい気にさせた感謝デーだった。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神大山(中央)はファン感謝デーでファンに手を振る(撮影・上山淳一)
阪神大山(中央)はファン感謝デーでファンに手を振る(撮影・上山淳一)