ドジャースのムーキー・ベッツ(31)が来季、再び遊撃に挑戦することになった。12月に行われたウインターミーティングの場でブランドン・ゴームズGMが「彼はチャレンジする準備ができている。オフシーズンをフルに使って準備をすればいけると彼自身は感じている」と発言。これまで右翼手としてゴールドグラブ賞に6度輝いた身体能力の高いベッツを信じ、昨季に続き2度目の遊撃挑戦を後押ししたかたちだ。デーブ・ロバーツ監督も「入念な準備をして臨むムーキーに任せることには、何のためらいもない」と話していた。

ベッツにとって今季の遊撃挑戦は、相当に悔しく、心残りだったと思う。昨オフは二塁手転向に向け練習を積んだが、正遊撃手になることが見込まれていたギャビン・ラックス(27)の守備の不安がキャンプ中に露呈し、開幕直前に急きょベッツが遊撃手をやることになった。しかし、いくら守備の名手であっても、準備不足の状態でシーズンにすぐ突入することは、やはり難しかった。最初はミスが目立ち、ようやくこなれてきたように見えた6月にデッドボールで左手を骨折し約2カ月離脱。8月12日に戦列に戻ったときには、チームがペナント争いの最中だったこともあり「現実的に考えて、今は外野に戻るのがベスト」と話し、右翼に復帰。遊撃手としてのチャレンジは、中途半端のまま終了してしまっていた。

入念な準備をして遊撃に挑む来季は、持ち前の身体能力の高さでレベルアップした姿を披露することは確実だろう。そうなれば、来季のナ・リーグMVP争いの勢力図が今季とはずいぶん変わる可能性もある。

昨季も、開幕当初は大谷よりもベッツをMVP予想の上位に挙げる米メディアが多かった。シーズン中にドジャースをよく取材しているニューヨーク・タイムズ紙のスコット・ミラー記者と話をしたが、同記者も「遊撃は一番負担がかかるポジションなので、それをこなしながら打撃で貢献する価値は大きい」と言っていた。来季ベッツが遊撃のポジションを完璧にものにし打撃でもいつものレベルで活躍すれば、またMVPの有力候補になる。さらにナ・リーグには、契約金額で大谷を抜き史上最高額の7億6500万円(約1150億円)でメッツと契約したフアン・ソト外野手(26)も戻ってきており、MVP争いに食い込んできそうだ。

もちろん、今季打撃だけで3度目の満票MVP選出と圧倒的だった大谷も、来季は二刀流復活で新たな歴史的シーズンを送ることも期待され、再び有力候補になることが予想される。来季のMVP争いは相当ハイレベルなものになるかもしれない。